腐りものを食す

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2005年の年頭に当たって、呑んだり食ったり話したり.........、

昨年の大晦日は、ヒズナマスをつっつき、シャブリをすすりながらの「鮭、ブリ」文化論を講じました。

今年の大晦日は、漬物をつつきながら、紙パックの日本酒を温めて飲んでいます。家内が何を食べたいか聞くので、旨い漬物があればそれが良いな、と言うことで実現した、至福のひと時です。

ところで、人間が何かを飲み食いする時、大きく言って3つの方法が有るそうです。
先ず第一が、「生で食べる」。
刺身とか、野菜サラダとかですね。

第二番目が、「加熱する」です。
煮たり焼いたり、これも色々です。
中には「煮ても焼いても食えない」ってモノ(人)も有って、それはそれで一種存在感が有るとも言えます。

アッ、今、日付が代わりました。2006年です。
皆さん、新年明けましておめでとう御座います。
今年も宜しくお引き立て、ご鞭撻、ご指導、お引き回し、その他色々宜しくお願い申し上げます。

さて、三番目は何でしょう?
それは「腐らせる」です。つまり発酵ですな。

    

 

私はこの「腐らせた」ものが、ことの他大好きです。
日本は、世界に冠たる発酵文化大国です。
冒頭の漬物や日本酒も「腐らせた」ものの代表ですが、納豆、味噌、醤油、等多彩です。アッ、そうそう、あのクサヤもそうです。

地方によってバリエーションのある、なれ寿司も「腐りもの」の代表選手ですね。
今、寿司、と言うと、通常は酢を混ぜたシャリに生の魚を乗せた、いわゆる握り寿司を思い浮かべますが、元々はすしと言えば、このなれ鮨だったんですね。
その、発酵の手間を省いて、飯に酢を混ぜ込み、東京湾(当時は「東京」湾等とは言わず、江戸前の海だった訳で)の魚を添えて提供したのが握り寿司、いわゆる江戸前寿司の始まりですが、それが気の早い江戸っ子に受けて今の大繁栄に繋がったんですね。
元々はファーストフードだった訳です、寿司なんて。
今や、寿司(スゥーシ)は世界中にはびこっているようですが、元々そのルーツは日本各地の「腐った」食い物だった訳ですね。

「腐りもの」の世界的権威である、東京農大の小泉武夫教授の話は「オイシイ」ですね。
氏は「味覚人飛行物体」と言われ、世界中の「腐ったもの」を食っては、それを紹介してくれています。

この「腐ったもの」についての感受性は、国によってまるで違うようです。そりゃあそうでしょう。生や、焼いたものなら国や地域を違えても、同じ素材なら概ね同じような味がするでしょう。
しかしあんた、同じものでも腐らせ方が違ったら、その結果はまるで違うものになるでしょう。

外国から来た人に、ウメボシを初めて食べさせると、もの凄い反応をするらしいですね。
朝鮮半島にはキムチと言う、いたってポピュラーになった「腐りもの」が有りますが、その他、鮫の肉を発酵させた(名前は忘れましたが)食い物が有って、これは強烈なアンモニア臭がするそうで、しかし彼の地ではその匂いが無いとダメなんでしょうね。
日本のクサヤは、まあこれとは違って素材からくる臭みでは無いのですが、これも極めて嗜好性(志向性、指向性)の強い「腐りもの」です。
尤も私は、他人が言うほどにはクサヤに「個性」を感じませんでしたが.........。

これも名前も何も忘れてしまいましたが、どこかの国に、何とかと言う缶詰が有って、それはもう缶の中で「腐って」いて、缶がパンパンに膨らんでいるそうです。
これを開缶するときには、ガスマスクが必要だそうです?よ。

ところで、私の独断的「腐りもの世界三大名物)」を上げさせてもらうと、先ず酒ですな(これは日本酒に限りません)。次に漬物。その次にチーズとヨーグルト等の乳発酵品。

オイオイ、納豆も有るじゃないか、などと異論も有ると思いますが、三つに絞るっちゅうのは、取り分け「腐りものフェチ」の私にとっても中々苦しいものが有って、異論が有ったら是非、多いに討論に参加して下さい。

 

ところで、前置きはさて置いて(長い前置きだったなぁ)、私が常々深く思い抱いていることは、やはり「酒」です。
人間は、遥か遠い昔から、お互いに情報交換した訳でもないのに、それぞれの地域で獲れる澱粉を「腐らせ」て、それぞれの酒を、つまりはアルコールの飲み方を磨いてきました。

 

日本では米から日本酒、麦や芋からの焼酎、イギリスでは麦とスコッチ(それがアメリカに行くとトウモロコシからバーボンになります?これはノウハウを継承しています)。
エジプトではピラミッドの頃からビールが有ったそうですね。冷蔵庫の無い時代、ビールを素焼きの壷に入れて、蒸発による冷却効果を利用したとか。オッと、フランスではブドウからワインです。

お酒は大きく分けて、醸造酒と蒸留酒が有りますが、私の好みは断然醸造酒です。
夏はビール、冬は熱燗、時々はワイン。
蒸留酒はどうも、単にアルコールをそのまま飲んでいるようで.........(異論が有ったら聞こうじゃないか)。

かと言って、私はそう言うことに(酒によらず何事においても)殆ど節度がありません、つまりこだわりません。
私の故郷は新潟の魚沼、「八海山」の地元ですし、「越の寒梅」の地元、亀田に数年住んだこともあります。又、友人経由で「雪中梅」も何度か呑みました。
ここ数年来の人気ブランド「久保田」の最高ランクである、大吟醸「洗心」呑み放題ってのも3、4回経験しました。

それらは確かに皆とても美味しい。
米の精米度を上げて作った大吟醸などは、どのブランドを呑んでも(少なくとも私には)区別が付きません。

そう言う高級なお酒も、勿論結構なのですが、私は3リットル1500円の紙パックでも、一向に差し支え有りません。
酒について、色々「講釈」をなさる方もいます。これを食ったときにはこう言う系統の酒、こう言うときにはこう言う酒、などなど。
そう言うことには殆ど拘らない、節度の無い私です。
邪道だと他人は言いますが、大吟醸でも、冬はお燗をして呑みたい方です。まっ!!、要するに呑めれば何でもいいんですな。
肴もあまり拘りません。大福でも羊羹でも、無いよりはマシで、それを食いながら呑めます。

今は亡き落語家「桂枝雀」の落語、「蛇含草」の中に、酒も甘いものもどちらも行ける人のことを「雨風(あめかぜ)」と言うんだ、と言うくだりが有りますが、さしずめ私など、暴風雨みたいなものでしょう。

 

今、既に元旦の3時を過ぎました。
日本酒からビールに切り替えて、脳ミソもいい加減に「腐って」来ました。
腐った脳ミソは、味噌と違って食えません。
そろそろ、お後が宜しいようで。

 

追伸
> これも名前も何も忘れてしまいましたが、どこかの国に、何とかと言う缶詰が有って、それはもう缶の中で「腐って」いて、缶がパンパンに膨らんでいるそうです。
これを開缶するときには、ガスマスクが必要だそうです?よ。

その後、ギャラリーの方から、上記について投稿があり、教えてもらいました。
この缶詰は、ノルウェーの「シュールストレミング」という名前でした。必要なのはガスマスクではなく(ガスマスクも有った方が良いかも)、合羽でした。

発酵で膨れている缶の中身が、開封のときに猛烈な臭気とともに、激しく飛び散って衣服に付くのを防ぐ為だそうです。

ふーむ、一度食ってみたい!!

    

 

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このページは、雄が2005年1月 1日 21:36に書いたブログ記事です。

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