ロシアの洞窟から見つかった4万年程前の、謎の人類「デニソワ人」がネアンデルタール人の姉妹種とわかった―― (ドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーポ博士達の国際研究グループが、23日発行の「ネイチャー」に発表)。
2008年、西シベリア南部、アルタイ山脈に有るデニソワ洞窟で発見された人類の小指の先端部の骨。博士達はその骨からミトコンドリアDNAを抽出・解析。
当時、この地域に居た現生人類、ネアンデルタール人の双方とも違う人類であることを突き止めた。
その後核のDNAの抽出・解析にも成功。その結果、デニソワ人は64万年前頃にネアンデルタール人と分かれたことが判明。
研究グループは、両者の共通祖先がユーラシア大陸の東と西で、デニソワ人とネアンデルタール人に進化した可能性が有るとみている。
又、解析結果を地球上のさまざまな地域にすむ現生人類と比較した結果、ニューギニアなどメラネシアの人々と僅かながら共通する部分を持っていた。
研究グループは、6万年程前にアフリカを出て地球上に広がった現生人類の一部がデニソワ人と混血し、その人々がメラネシアへ移動したのではないかと考えている。
同じ地層から見つかった上顎の臼歯は、デニソワ人と確認されたが、小指の骨とは別人のものと判明。
【解説】
現生人類の成り立ちに一石
現生人類は、20万年前程前にアフリカで生まれ、その後全世界に拡散したとする説が有力である。「アフリカ単一起源説」。
現生人類がアフリカを出たとされる約6万年前、ユーラシア大陸やインドネシアなどには、ネアンデルタール人や原人(ホモ・エレクトス)と言った人々が住んでいたことが分かっている。
アフリカ単一起源説では、現生人類がこれらの人々と完全に入れ替わったと考えて来た。
ところが最近の研究で、ネアンデルタール人や原人意外にも、これらの地域には人類が住んでいたことが分かって来た。インドネシア・フローレス島の小型原人―ホモ・フロレシエンシス、或いはデニソワ人。
ペーポ博士達の国際研究グループが2010年5月に発表した論文では、現生人類がネアンデルタール人と混血していたことが明らかにされた。
デニソワ人が現生人類と混血していた可能性が有るとする、今回の研究結果は現生人類の成り立ちがこれまで考えられていたよりも複雑だった可能性を示している。
博士達の研究は、何万年も前の骨からDNAを取りだし、正確に解析したもので、このように古い骨にDNAが残っていること自体、非常にまれだし、今生きている生物による汚染を排除しなければ正確に解析できないなどの困難が有る。
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