最初に、これも後出しになって非常にバツが悪いのですが、「森の中で『隔離』は考えられない」との主張は撤回します。
樹冠、林床部と言った範囲で、直立二足歩行に移行する程の隔離が起こるとは、今も思わないのですが、アフリカの森の中に幅広く棲息していたであろう共通祖 先のある部分が、何らかの形で「隔離状態」になり、独自の進化を遂げることは有り得るな、と、2日ほど前から考えていたことでした。今考えると当たり前と 言えば当たり前のことですが。
どなたかからの指摘が無いうちに、なるべく早く訂正・撤回しておこうと思っていた矢先、snさんからのご指摘を受けました。
ウソっぽいと言われてもしょうの無いタイミングですが、事実では有ります。
「森の中で『隔離』は考えられない」、との主張を前提として展開して来た議論の部分についても、従って撤回せざるを得ません。
今は改めて色々、自分の中で整理中です。
この件に関し、snさん始め、失礼が有ったこともお詫びしておきます。
申し訳ありませんでした。
ただ依然......、
- 直立二足歩行へのハードルは高いであろうこと。
- 近縁3種の繁殖戦略の違いや、ヒトがナックル歩行を経ていないらしいことなどから、ヒトの直立二足歩行が、共通祖先由来のもので無く、ヒト独自のものだろうこと。
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分岐後のそれぞれの祖先たちと比較してもなお、森に密着・依存していたであろう共通祖先が、その森の中で直立二足歩行に移行する「必要性」「メカニズム」が納得できないこと。
ヒトだけの特徴と言うことと相まって、そこに何らかの「特別の要因」を考えざるを得ないこと。 - 分子が示す分岐年代の700万年前、若しサヘラントロプスが実際に直立二足歩行を獲得していたとすれば、それも森の中での自然的経過としては考えにくいこと。
- アルディピテクスでも半ば言えることですが、サヘラントロプス等を視野に入れた場合、繁殖形態、つがいの形態などから、gbさんご指摘の、C・O・ラブジョイの「運搬説」も考えにくいこと。
...等など、「森林起源説」には無理を感じるのですが、前提の半分を考え直さざるを得ない中で、今これらに拘っても、私としても意味の無いことですので、一部見解の違いは保留しつつ、素直にsnさんにシャッポを脱ぎます。
元々ホワイト隊の、今回の発表の紹介と言う積りでしたし、その結果から言えることとして......、
- 森の中での直立2足歩行獲得のメカニズムを説明できるか
- サバンナ以外の、森でないところでの要因を探すか
...を提起し、私も「若し、森の中での説明が付くなら、確かにそれが再節約だ」と述べていた通り、先ずアクア説有りき、で有った訳では有りません。それは一貫した態度です。
繰り返し述べている通り、アクア説そのものの主張を、ここでは殆どしていません。
今回の議論を通して、「場合によっては、森の中にその可能性を否定できないかも知れないな」程度には、私も傾斜が緩やかになりました。
負け惜しみでは無く、素直に一つ利口になったと思っています。
「サバンナ説」は選択外として、「森林説」「アクア説」双方に視野を広げて今後の展開を見て行きたいと思っています(それ以外の説は、今のところ私には想定できない)。
一応自身の総括としても、snさんご指摘の項目について、逐条的にコメントして置きます。
>ヒト定義と岩波の記述
これは既に「ヒトと類人猿を区別する第一の指標」と訂正済みですが、「全てのヒト的特徴の前に先ず直立二足歩行を獲得した」との記述は、進化人類学の書籍には一般に見られる記述で、議論の足場としてのヒトとして、或いは考え方としてこれに準拠しました。
しかし、snさん等からの批判の深さに、対応できる基準で無かったかも知れませんね。
なおsn30さんの批判が、岩波生物学辞典に対して向けられたものだとなど、誤読はしていません。
>オレオピテクス
初見でした。その詳細は分かりませんが少し認識を替える必要が有りますね。
有難うございました。
>実際,「アルディ」にはアクア説を示唆する要素がまったくないにも関わらず,雄さんは「アルディ」の発見をみて「アクア説に一票」入れてしまっています。
これは繰り返し述べているように、アルディ→アクア説に一票では有りません。
サバンナ説が破綻した今、残った仮説としてアクア説に傾斜している、そう言う見解だと述べている筈です。
>「種分化」と「集団の分岐」と「個々の形質の獲得」
この辺は冒頭述べたように、私の勘違い、勉強不足でした。弁解の余地が有りません。
同時に勉強になりました。
>カエル
>逆にお聞きしますが,「カエルが水の中に卵を産み続けるのに問題がある」というのは,
どういう状況を想定しているのですか?
>少なくとも,現在,「泡巣を作るアオガエル科のカエル」が利用している同じ水域は,「水中産卵しているカエル」も利用していますよ
そもそも「問題」として建てたのが、現在の多様性を強調しても意味は無く、そのきっかけを問題とすべきではないか、と言うことでした。
ですから、「泡巣を作るカエル」「水中産卵しているカエル」の、現在の混在を述べられても、それは私の意図とは違う、と言うことです。
同じ森の中でのヒト・チンプの分岐を説明するには、同じ環境下でのカエルの分岐を問題として建てるべきだ、と言う主張でしたが、これも「隔離」の問題が私の中で破綻した今、無意味な主張となりました。
>「直立二足歩行は森林では絶対に進化できないほど生存に不利な形質だった」としたら,
どうして「アルディ」は森林で生きていけたのですか?
「森林では絶対に進化できない」と言ったのは、直立二足歩行「獲得」についての、私の見解です。アルディは「中間点」であって、その過程で森林に再度適応した形質、と言う想定です。
>「考え方」が間違っているから,事実に対して真っ当な解釈ができないんです
>ここで雄さんがみんなから批判されるのは,決して「雄さんがアクア説支持者だから」ではありませんよ
ご批判は胸に刻みます。今回は結構素直に迫っていたと思うんですが。
ただ「そう言うものなんです」では納得しかねた。そう言うことでした。
※ 後日(2011/1/8)記
少し陳謝と後悔が過ぎたかな。やはり「森の中での第一歩」は可能性が限りなくゼロに近い。もう少し自信を持って主張すべきだった。
snからは一度としてキチンとした説明・解答は受けていない。ただ他人を批判するだけ。
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