【論理矛盾】

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空想的想定論に基づくsnさんの議論は、結局私が度々指摘していた「論理矛盾」に行きつかざるを得ません。

>これは雄さんがこの二年半の間,進化生物学についてまったく勉強してこなかったということだと思います
>雄さんのような「考え方」は間違っていると,mkさんが何度も繰り返し教えてくれていたのに,未だに成長の跡がありませんね

このお言葉は、この件に関してはそっくりsnさんにお返ししたいと思います。
(他の問題ではsnさんの博識・多才ぶりに、私も大いに敬服しているんですよ。いやホント、皮肉じゃ無く)

 

三点について述べて見ます。
なおタイトルは私の方で勝手に付けました。

    

 

『検証1-分岐後の直立二足歩行獲得説』

>仮に,「高度な直立二足歩行への適応」がヒトとチンパンジーが分岐した後に起こったとしましょう(前述の1)2)3)の説)
すると,ヒトがチンパンジーの集団から分岐してから「高度な直立二足歩行」を獲得するまでの期間は,系統としてはヒトの直系の祖先でありながら,雄さんの定義では「二足歩行していない」からヒトではないということになってしまいます
要するに,この期間は「雄さんのヒトの定義」は使えないということなんですね
http://6609.teacup.com/natrom/bbs/10278

私はヒトの定義として「直立二足歩行」とは言っていますが、そこに「高度」などと付けてはいません。これは確認しておきます。
それは兎も角.........、
これって一体どう言う状況を想定しているのですか。

そもそも「種分化」とは、地理的な隔離など何らかの要因で「形質の変化」が有ったからでしょう。何も変化が無ければ種分化とは言いませんからね。
「二足歩行(さえ)していない」状況で、どうして共通祖先から分岐し、「系統としてはヒトの直系の祖先」などと言う前提が成り立つんですか。

「最初のヒト」は、snさんが正しく指摘した通り「この時点でのヒトの祖先は『単なる二本足で歩くだけのサル』なんですよ」。
http://6609.teacup.com/natrom/bbs/10228

ここから直立二足歩行を取り払ったら、残るのは「単なるサル」だけになるんじゃないですか。
このサルが共通祖先と一体どこが違い、何で区別でき、そして分岐したことになるんですか。

例えばこの時期の「ヒトの直系の祖先」の、完全な全身骨格化石が発見されたとしましょう。直立二足歩行を獲得する前、つまり未だ四足歩行の化石で、そもそもどうして「ヒト直系」と分かるんですか。共通祖先とどうやって見分けるんですか。歯ですか。

「ヒトがチンパンジーの集団から分岐してから『高度な直立二足歩行』を獲得するまでの期間」と言う前提そのものが論理矛盾なんですよ。
こんなことになるのは結局snさんが、ヒトと直立二足歩行を切り離して考えているからです。或いはおそらく頭の中で「系統」が独り歩きしているとか。

 

実際の経過は、ともかく何らかの要因で、直立二足歩行で「最初の一歩」を歩きだした「サル」がいた。それを後世の我々が「ヒト」の系統として分類しているだけです。
直立二足歩行などの、ヒト的形質から切り離された、空想上のノッペラボーの「ヒト」など、アフリカの何処を掘り返したって、出てきませんよ。

snさんご自身の定義でもラベルでも構いません。直立二足歩行獲得前の「ヒトの直系の祖先」とは、どんな形質だったのか聞かせて下さい。
そしてそんな「ヒト」が発掘されてヒトと同定された例が、只の1件でも有ったら聞かせて下さい。発掘される可能性でも結構ですよ。但し実体的な根拠を示して貰えればね。

 

『検証2-直立二足歩行複数起源説』

>「ヒト上科における直立二足歩行の獲得は進化の過程で一度しか起こっていない」とは限らないからです
>雄さんにとっては「直立二足歩行の獲得」は特別なことなので,二回以上起こった可能性は想定外でしょうけど,現在,発見されている証拠からは様々な進化経路が考えられるんですよ
http://6609.teacup.com/natrom/bbs/10253
>ブラキエーションへの進化でさえ,3回も起こっているのに,
雄さんは直立二足歩行への進化が1回しか起こっていないとなぜ言い切れるのですか?
http://6609.teacup.com/natrom/bbs/10279

snさんが何を意図してこの説を持ち出したか、やや不明なのですが、全く違った場所で、全く独自に直立2足歩行が発達したことを、論理的には否定できないかも知れませんね。私は有り得ないと思いますが。

しかし、森で有れ何処で有れ、たった一回の「直立二足歩行起源」さえ説明しあぐねている時、何故二回なら説明できるのか、サッパリわかりません。
説明困難を二倍にしただけじゃないんですか。

いや、二倍に留まりません。
生物の進化全体からすれば、殆ど瞬間的とも言える初期人類誕生の時期に、何故たまたま二回も同じことが、しかも全く独自に起こったか、その「偶然性」も説明する必要が有るでしょう。

    

 

『検証3-共通祖先の段階での直立2足歩行獲得説』

>ひょっとすると,チンパンジーとヒトの共通祖先はすでに直立二足歩行をしていて,チンパンジーの系統で二次的に「高度な樹上適応が起こった」のかもしれません
>つまり,ヒトとチンパンジーの間においては,「直立二足歩行」の方が「原始的な形質」であり,「ブラキエーション」や「ナックルウォーク」の方が「進化的な」「派生形質」である可能性もあるということです
http://6609.teacup.com/natrom/bbs/10251

>(以下のカキコの中ででmkさんは,『仮に』として
「チンプも実はかつて常時直立二足歩行を獲得していたが、後に二次的に二足歩行を失っていた」可能性を指摘していますが,前述のようにアルディの特徴はその可能性を排除していないのですよ)
http://6609.teacup.com/natrom/bbs/10254

>また,仮に,直立二足歩行への進化が1回しか起こっていなかったとしても,
それがヒトと他の現生種(チンパンジーなど)との分岐の前に起こっていないとなぜ言い切れるのですか?
http://6609.teacup.com/natrom/bbs/10279

 

これは私からすればそもそも論理矛盾で、絶対有り得ないとしか言えないのですが、仮にsnさんが仰るように、共通祖先の段階で直立二足歩行を獲得していたとしましょう。

確かにこれなら、ヒトの段階での「直立二足歩行起源」の説明からは回避されます。しかしそれは単に問題を前倒しにしただけで、なんら解決にはなっていないのです。
そもそもこの主張自体、森の中でのヒト直立二足歩行獲得の説明が困難だと言うことの、主張者自身の白状になっている訳ですが、出て来た「説」は主張している本人の主観的意図に反し、説明を何倍にも難しくしています。

>ひょっとすると,チンパンジーとヒトの共通祖先はすでに直立二足歩行をしていて,チンパンジーの系統で二次的に「高度な樹上適応が起こった」のかもしれません

ヒト或いはチンパンジー、ボノボのそれぞれの祖先たちと比べてさえ、遥かに森に密着・依存していたであろう共通祖先が、その森の中で一体どう言うメカニズムで直立二足歩行に移行したのか?
直立二足歩行に移行しなかった片割れはどうなったのか? 共通祖先丸ごと樹上から地上の直立二足歩行に移行したのか? ゴリラとの関係は?

しかも直立二足歩行獲得後、今度はチンパンジーたちの系統が、同じ森の中で直立二足歩行を捨てた理由まで説明する必要が有ります。
ましてチンパンジーはヒトと違って遺伝子的なバラツキが多様で、アフリカの森の中での幅広い棲息が確認されている訳ですが、ボノボも含めて各地域のこれらが一斉に、それまで一次的に獲得していた直立二足歩行から、ブラキエーションとナックル歩行に移行した説明が必要になります。

「直立二足歩行複数起源説」にしろ「共通祖先の段階での直立2足歩行獲得説」にしろ、なんでsnさん達はこんなに難しいことがお好きなのか。
思わず「マゾかっ!!」と叫んでしまいましたが、ともかくmkさんでもsnさんでも、若し説明出来ると仰るなら是非お伺いしたいものです。

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このページは、雄が2010年2月20日 10:59に書いたブログ記事です。

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