MMさんとT女史から「民主集中制批判」が挙がっています。
二人が同一人物だと言う積りは有りませんが、批判の根拠となっているソースが、全く同じであろうことは、例えば「党首の祖父や叔父の問題点なども、共産党員が知るのは巷間の伝聞だということです」等の、二人共通の引用からも明らかです。
結局私がNo.91で指摘しておいたように、殆ど外国の例だけのパターン化された「実在的弊害」だけしか挙げられませんでした。
既にこの問題については水掛け論の様相を呈しているし、私もやや辟易気味なのですが、まとめて少し述べさせて貰います。
スターリンとそれに続くフルシチョフ、ブレジネフ等による、大国主義的干渉主義と国内における粛清や秘密警察を伴う官僚的支配、或いは毛沢東の文化大革命による権力闘争は、T女史の言う通り「実在的恐怖」でした。現実に存在したと言うことです。
しかしその原因を、何でもかんでも民主集中制のせいにして理解した積りになっても、それは実在に根拠を持たない、他人からの借り物「理論」に過ぎません。
スターリンや毛沢東の文革に「民主」が無かったことは明らかです。そこに批判が集中している訳ですからね。
同時に、スターリンも毛沢東も、側近や盟友を含む身近な同志を真っ先に粛清しています。「民主」だけでなく、このどこに党内の「集中」が有ったと言うのですか?
有ったのは個人的独裁で有り、単なる権力闘争です。民主も集中も有りません。
ましてや、まともな党大会や各級機関の会議も開かれていない北朝鮮では、民主集中制が機能する実在的土台さえ有りません。
つまり二人の批判は、最初から無いものを取り上げて攻撃する「藁人形論法」に過ぎません。
スターリンや毛沢東、金王朝等、それぞれに異なる圧政の原因と経過を、個別具体的に探究することなしに、味噌糞一緒に「民主集中制」で括って理解した積りになる、ここからは何の原因究明も教訓も得られません。
ましてヒトラーや日本の軍国主義、ポルポトやフセイン、カダフィ、或いはブッシュの侵略や抑圧体制の教訓も得られる筈も有りません。
T女史は繰り返し……、
>スターリン排除を試みたレーニンの妻も、まさしく民主集中制の下、その試みは打ち砕かれたのである。
…と述べている。
スターリンの権力掌握の過程が、若し本当にT女史の言うように「民主集中制の下」に有ったとするなら、その「排除を試みたレーニンの妻」は、党内クーデターと言うことになりますよ、理論的にね。
そもそもスターリンにしても毛沢東にしても、この時期「民主集中制」等と言う組織原則は定式化されていなかった筈です。
日本共産党に於いても民主集中制が定式化されるのは、綱領、規約が確立された第八回党大会(1961年)以降のことですよ。
戦前は創立の瞬間から日本共産党は非合法下に置かれ、特に戦中、幹部は殆ど獄中に有り、戦後はソ連共産党や中国共産党の干渉の下、50年問題とも言われる党分裂を経験している。
その分裂の深刻な総括から民主集中制の組織原則が確立された訳で、ここでも又、何でもかんでも、特にソ連共産党の干渉を由来とする「野坂参三問題」迄持ち出して、民主集中制批判の材料にしてしまう。コトの順序が逆さまだとしか言いようがない。
私が指摘しておいた通り、「先ず最初に『民主集中制は悪だ』との(脳内)結論有りき」で現実世界を解釈してしまう、典型的な観念論的議論です。
野坂参三除名問題で言えば、発端はソ連崩壊に伴う秘密文書の流出で、日本の週刊誌が記事としたことに有るようだ。
日 本共産党は週刊誌のソースだからと、単に反発することをせず先ず本人にその確認を取り、本人が認めた上で同時にソ連に人を派遣し、当初難色を示したソ連側 から当該秘密文書を大量に入手し、その裏を取った上で「野坂の行為は、名誉議長の名と両立しない」と除名したもののようだ。
ただ既に100歳を超えた野坂に対し、人道的配慮から住居を追い出すと言うことはしなかったと聞いているが、この辺正確なことは知りません。
この件でも又、民主集中制と無理やり結び付けて非難することの、論理的浮き上がりが明らかです。
そもそも日本共産党に対しての「民主集中制」非難論に、根本的な論理矛盾が有るのだが、当の非難者はそれに気が付いていない。
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非難する論調の主題は「幹部だけが専制的に優遇され、権益を独占する為の、悪魔のシステム」らしいが、残念ながら日本共産党は現在政権に付いていない。企業団体献金も受け取っていない。貰おうと思えば合法的に受け取れる政党助成金さえも、受け取りを拒否している。
若し独占すべき「権益」なるものが有るとしたら、論理的にその負担は全て一般党員が担うことになるが、「幹部専制」と「隷属する党員の拡大」は正面から矛盾する。
多数を一時的に騙すことも、少数を持続的に騙すこともなんとか出来るが、多数を持続的に騙し続けることは不可能だ。
本当に幹部だけが専制的に優遇されているとしたら、今頃一般党員は嫌気をさして一人もいなくなっているだろうし、新聞赤旗の読者もいなくなるだろう。裸になった幹部は、一体どうやったらその優遇を持続出来るのだろう。 -
幹部に専制的優遇が与えられのが「民主集中制」だとして、それ程オイシイものなら、普通はその権益を子供や孫に引き継ぎたいと思うのが人情だろうし、そう言うシステムを作り上げるだろう。事実自民党や民主党は、二世、三世がゴロゴロしている。
日本共産党にそう言う世襲制度は一切見られない。 -
そもそも、そのような「権益」を求めて日本共産党に入党するとしたら、これ程効率の悪い人生は無いだろう。
逮捕・拷問を覚悟しなければ入党出来なかった宮本顕治や多喜二は勿論として、不破さんにしても志位さんにしても、世俗的な利益を求めるなら、一般企業に就職するか役人になるか、或いは自民党に入った方が遥かに近道だ。
共産党に入ったからと言って、書記局長や委員長になれる保証などどこにも無かった筈だし、なったからと言って政権党でも無い共産党で、どれ程の「権益」が期待できるか、そんな権益期待で入党することが如何に非効率なことか、考えただけで直ぐ分るだろう。
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