1992年エチオピアで最初の化石・上顎部臼歯が、ティム・ホワイトを中心とした国際研究チームで発見されて以来(その最初の化石発見者は、同グループの日本人、諏訪元-当時大学院生-東大教授)、20年近い研究期間を経て、昨年(2009年10月2日)、その全体像を示す11本の論文とともに、一個体分の骨格や復元像を、サイエンスに公表した。
http://sankei.jp.msn.com/science/science/091001/scn0910012344000-n1.htm
実はこの最初の発見以降、ヒトの祖先に係る二つの大きな発見が相次いでいた。
一つはフランスのミシェル・ブルネ率いるグループにより2002年発見された、サヘラントロプス・チャデンシス(愛称、トゥーマイ)。
これは生息年代が700万年前とされ、その古さとともに、発見場所が中央アフリカのチャドだった為、それまでの「イーストサイド・ストーリー」を覆す程の衝撃を与えた。事実、同ストーリー提唱者の、イブ・コバンをして、自説撤回ともとれる発言をさせている。
もう一つは、マーティン・ピクフォードとブリジット、セヌにより2000年に発見された、オロリン・ツゲネンシス(愛称、ミレニアム・アンセスター)の大腿部を中心とした幾つかの化石。これはほぼ600万年前とされている。
この二つの化石に比べると、今回の発表は440万年前とやや年代は下がるが、1992年の最初の発見に引き続く、地道な発掘調査で得た100点以上の化石と、一個体と見られる何点かの化石を元に、慎重な精査の上、今回の復元モデルを含めた発表となったものだ。
この研究成果についての詳報や意義については、何れ「アダムとイブ」サイトに掲載するとして、兎も角この一連の発見や今回の発表により、人類起源説の中で、「サバンナ説」、その洗練版である「イーストサイド・ストーリー」の破綻が確定した。
又、それに伴って、サバンナ説を前提としたあらゆる「直立二足歩行起源説」の破綻も確定した。
2001年、サヘラントロプス・チャデンシス(トゥーマイ)の発見の時点で、イーストサイド・ストーリー提唱者のイヴ・コバン自身、既に自説を撤回している。
今回の研究成果の意義は、1個体のほぼ全身骨格とも言える化石を元にした復元モデル(アルディ)と、その詳細な研究成果によって、明らかに直立二足歩行を していた(従ってヒトと同定される)ホミノイドが、少なくとも440万年前のアフリカに既に生存していたことが明確になったことだろう。
トゥーマイにしてもオロリンにしても、その古さについての意義は巨大だったが、残念ながら部分化石に過ぎなかった。
440万年前のアフリカにサバンナは未だ無かった。
今後の課題は、森の中、或いは森と平原の混在状態(モザイク状態)の中で発見されたアルディが、一体どうやって直立2足歩行を獲得したか、そのメカニズムだろう。それについて、ホワイト隊は何も語っていない。
私としてはますます「アクア説」への傾斜が強くなった。
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