遅レスで失礼。「ヒト」呼称について

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dmさん

>雄さんの引用先でも、人間・人類・ヒトをヒト亜科と同一視した表現をしているのは定説とは言えません。好意的に見れば不注意。ヒト亜科を「ヒト」 と表現するのは普通の用法ですが、読む方で誤解することもある。いや大脳がちょっと小さいからと言って同じ直立二足歩行種族であるアウストラロピテクスを 差別すべきじゃないという心がけは立派ですけど(^_^)
>そして今までの雄さんの主張は、人間・人類・ヒトをヒト亜科と同一視しているように見えるのです。そこで改めて明確にしてほしいのですが、

「ヒト=ヒト亜科」を定説と言った覚えは無いのですが、「定説では無い」「不注意」と言われていますので、この点は繰り返しdmさんと行き違いになっている問題でも有り、議論の前提になることでも有り、明確にしておきましょう。
理屈っぽく、相変わらず長くなりますが.........。

 

私の関心は今現在の「ヒト」の生物学的な位置関係、系統分類では有りません。

700万年前と言われる、共通祖先からの分岐の契機・メカニズムと、それ以降、現在までの経過・過程です。
特にその中で、生物学的には単なる二本足で歩く裸のサルに過ぎない存在が、どうして他の類人猿たちと、かくも隔絶した文明や社会を作ったか、その要因です。
そう言う枠組みと視点で、全体を総称するものとして「ヒト」と表現しています。

岩波生物学辞典では「ヒト」を次のように説明しています。
「広義にはヒト科(Hominidae)のヒト亜科(Homininae)に属する動物の総称、狭義には現生の人類」

或いは下記解説がより具体的かつ適切かと思われます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E9%A1%9E%E3%81%AE%E9%80%B2%E5%8C%96
"なお、「人類」という用語は人類の進化の文脈ではヒト科ヒト亜科ヒト属生物に対して用いられるが、他の属(アウストラロピテクス属など)を含むヒト亜科生 物を指す場合もある。本記事では、人類という用語をヒト亜科生物に用い、ヒト属生物については学名で表記し、特にヒト属生物のうちホモ・サピエンス・サピ エンスについては現生人類と表記する。"

定説であるかどうかは別として、私は「ヒト」を広義の意味で、共通祖先から分岐以降現在に至るまでの総称として捉えています。その中の特定の属、種につい てはそのまま、学名或いは俗称を用い、特にホモ・サピエンスについては「現生人類」と呼ぶことも有ります。dmさんの言われる通 り、ヒト亜科、或いは人類とほぼ同義として使っています。
「人間」については、特に基準は有りませんが、「社会的存在」としての側面を強調する文脈で使っていると思います。

ヒト亜科とかヒト属とかの系統、その同定は、言わば進化の結果に基づく分類ですよね。
しかしその系統分類や名称が、今のように定まったのはつい最近のことです。つまり分子による解析が持ち込まれ、他の類人猿やサルたちとの近縁度が遺伝子レベルで判明してからです。それ以前は全く違った分類と解釈がされていた。

更に言えばそれは既定のこととして固まっているのでは無く、今現在でもその内容は随時変更され、書き換えられています。「ヒト亜科」の内容も流動的で可塑的だと言うことです。
新しい「ヒト」の発見(その「ヒト」は、つい1万2千年前まで生きていたホモ属=ホモ・フローレシエンシスだったり、アウストラロピテクス以前のアルデピ テクス属であったりサヘラントロプス属であったり)の度に、「ヒト亜科」の内容は書き換えられ、dmさんが挙げられているアウスト ラロピテクスは、もうとっくに「最初のヒト」では無くなっています。

要するに、最初に系統分類の枠や呼称が有ったのではなく、それは化石や分子による知見によって「つくられて来た」のだし、現在進行形だと言うことです。
しかも「ヒト」の出現と同定によって初めて、未だヒトが姿も形も無かったオランウータンやテナガザル、ゴリラやその共通祖先にまで遡って、「ヒト上科」等と命名している訳ですからね。
最初に「ヒト」なり「ヒト亜科」の枠組みを定めてから、現実に発見されてきた化石種をそこに割り振りしている訳では絶対ないのです。

「ヒト亜科」の中身について言えば、そもそもその「最初のヒト」がなんで有ったか、共通祖先がなんで有ったか、一番大事なところが確定されている訳では有りません。それを探して化石ハンターたちは、たった今現在でもアフリカで血道を挙げているのです。

私が何を言いたいかと言えば、700万年に渡る、実際のヒトの歩みに依存する形での、結果としての系統分類、たまたま今現在「ヒト亜科」と呼称されてい る、そう言う流動的な枠組みを使って、逆に実際のヒトの歩み・ヒト全体を捉え、表現するのは、本末転倒だろうと思う訳です。
分類や呼称が変わったからと言って、当の「ヒト」達が別のものになる訳では有りません。

人類700万年の系統樹が有ったとして、その根元から系統樹全体を「ヒト亜科」と、言わば部分名称で呼び、そのホンの先端の十数万年だけを「ヒト」と全体名称で呼ぶのは、人類の歩みと言う視点からはやはり違和感を感じます。
事実そう言う表現をしている系統樹は皆無です。少なくとも私の知る限り。

全てを総称する形で、「ヒト」概念を確立して置くことで、ヒトそのものの変更なしに、新しい発見や解釈の深化はその内容の問題として、柔軟に対応することが出来ます。
アウストラロピテクス以前の属として、アルデピテクス属、オロリン属、サヘラントロプス属の三つが新設されていますが、だからと言ってそれで「ヒト」解釈や呼称を変更する必要はない訳です。

......と言うのが私の「ヒト」解釈で、折角のdmさんのご指摘ですが、これを変更する積りは有りません。
しかし同時に上記引用にも有る通り、現生人類に限って「ヒト」と表現することが間違っていると言う積りも有りません。

お互いの「ヒト」解釈、視点を確認さえ出来れば、議論が出来ないことも無いと思っていますので、この点は了解して欲しいと思います。

具体的な質問を頂いていますが、又改めて近いうちに。

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このページは、雄が2010年5月15日 06:25に書いたブログ記事です。

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