RE ahさん
>今回の発表から言えるのは
・アルディピテクスはかなり古い時代に、恐らく森林の中で、かなり高度な二足歩行を既に獲得していた
・二足歩行への進化が地溝帯でのみ起こったとはいえない
という事くらいなのでは?
事実としては概ねその辺なんでしょうが、問題はその事実から何を汲み取るか、と言うことなんでしょうね。それは何に着目するか、と、認識の深さによって違ってくるのでしょうけど。
アウストラロピテクスとの系統関係は兎も角、私の関心の範囲で言えば、今回の発表の意義は一言で言って「サバンナ説、イーストサイド・ストーリーに引導を渡した」ことだと思っています。
1992年、ホワイト隊の諏訪元(当時院生)が、アルディピテクス・ラミダス(440万年前)の最初の化石を発見した辺りから、「ストーリー」に綻びが出始めました。
その後1996年、アルディピテクス・カダッパ(580万年前)、2000年、オロリン・ツゲネンシス(600万年前)、2002年、サヘラントロプス・ チャデンシス(600-700万年前)と、相次いで発見された初期化石人類の推定棲息年代から、事実上「ストーリー」は破綻していました。 ただ発見されたそれらは何れも部分化石で、それをヒトと認めない人たちもいた訳です。 オロリン発見者のM・ピクフォードとB・セヌは、サヘラントロプスをゴリラの化石だと言っているようですし。
この辺、この業界も色々、競争と嫉妬の渦巻く世界のようで。 今回、何より同一個体とされるほぼ全身骨格と、15年以上に渡る綿密な研究によって、おそらく反論の余地ない形で発表されていると思われます。 こう言うことに、ティム・ホワイトは極めて非妥協的らしいですからね。 ですから今回の発表で、サバンナ説、イーストサイド・ストーリーの破綻が、完全に確定したと言えるし、当然それを前提としたあらゆる「直立2足歩行起源説」の破綻も確定した訳です。
それでもなお、サバンナ説や「ストーリー」を前提とした議論を展開しようとしたら、今度は説明責任はその人たちが負うことになります。 ヒト定義の第一項目は「直立二足歩行」ですから、今回その最も基本的な部分で仕切り直しが迫られたと言うことです。 今後、人類のルーツに言及する時、誰もが否応なく次の問題に正面から向き合わざるを得なくなるでしょう。
- 森の中での直立2足歩行獲得のメカニズムを説明できるか
- サバンナ以外の、森でないところでの要因を探すか
ヒトの直立二足歩行に関し、論理的にはこの二者択一しか無くなりました。 snさんが和訳・解説して頂いた今回の論文でも、 >サバンナでもサバンナモザイクでもなく,"wooded habitats"で起こったことを示唆.........。 している訳で、サバンナ、その前段階のサバンナと森林のモザイク状態を、選択肢から外しています。
今まではサバンナ説、「ストーリー」を既定の事実として、直立二足歩行は織り込み済みでスルーすることが出来ました。 今後はそのことに頬被りで通す訳に行かなくなった。今回の発表の意義を私はそう捉えています。
コメントする