RE ahさん
2月12日現在までの内容に限ってのコメントです。
>汲み取るというか、事実に即した議論以外はやりようがないでしょう。
私もその積りですけど。
今回の「事実に即し」て、前回私が述べたことは「サバンナ説、イーストサイド・ストーリーに引導を渡した」と言うことでした。
これは別に私が言い始めたことじゃないですよ。
イーストサイドストーリーの破綻は、提唱者のイヴ・コバン氏自身撤回済みの「事実」です。
或いは今回、「(アウストラロピテクスの出現までの)初期ヒト科の進化はサバンナでもサバンナモザイクでもなく,"wooded habitats"で起こったことを示唆していると主張」しているのは、論文の当事者、ティム・ホワイト達です。
「事実に即した議論」をしましょ、と言うのは、最初から私がお願いしていることです。
>否定されるのはせいぜい「大地溝帯で初めて二足歩行が獲得された」程度では?
「大地溝帯で初めて二足歩行が獲得された」が必ずしも否定されたとは思っていません。
否定されたのは、サバンナ、或いはサバンナモザイクと言う環境です。
>サバンナ化した時期を根拠にしておられましたが、ミクロな環境の変化まで追えているわけではないでしょう。
「ミクロな環境の変化」と言うのが何を想定しているのか分かりませんが、若しそう言った環境変化が直立二足歩行の契機となったとしたら、それは進化人類学上の新説です。
私は直立二足歩行が、「ミクロな環境変化」で獲得されるような代物だとは思えませんが、若しそれを主張なさるのであれば、やはりその説明が必要でしょう。
>また、「森林で既にかなり発達した二足歩行をしていた」というだけで、「その後草原へ出て洗練された」まで否定してはいないのでは?
「その後草原へ出て洗練された」ことを私は全然否定していませんよ。色々な環境に適応する中で直立二足歩行は洗練されて行ったんでしょうね。現在は自動車や自転車の行きかう中での、交通規則に順応した歩行が求められています。
ただここで論議されているのは、直立二足歩行の洗練の過程では無く、その契機・キッカケとそのメカニズムです。要するに「最初の一歩」です。それが草原で無かったことだけは今回の論文が示している「事実」です。
「経過」と「契機」の混同が感じられます。
>失礼ながら雄さんの書き方を見ていると、「なんでこうイーストサイドストーリーを目の敵にするのかな」と見えてしまうのですが。
ここまで述べて来たことでお分かりのように、私は別に目の敵になどしていません。事実をそのまま述べているだけです。
そもそもアフリカの地質学上の、或いはそれを受けての気象や環境からして、許される仮説は限られています。440万年前、アフリカにサバンナは無かった。それだけの話です。そして今回の発表の意義は、それを反論の余地なく実証したことです。
ましてアルディの復元モデルから推測するに、直立2足歩行を最初に獲得した時期はそれよりずっと前らしい。サヘラントロプスで言えば200万年以上も前です。しかもその場所はウエストサイド。
馬場悠男(国立科学博物館人類研究部長)さんも、サヘラントロプス発見に際し、「これで人類発祥の地は、アフリカのどこか、全く分からなくなった」と述べておられます。
私ごときが「目の敵」にする前に、イーストサイド・ストーリーは提唱者のイヴ・コバン自身が撤回している「事実」です。
>その代わりとしてアクア説がいきなり出て来るのが不思議です。
私は前回、上記の「事実」を受けて、こう述べている筈です。
- >森の中での直立2足歩行獲得のメカニズムを説明できるか
- >サバンナ以外の、森でないところでの要因を探すか
これ以外の選択肢は論理上有り得ません。森か森以外か、森以外で有ってもサバンナはそこに含まれない。これが今回の発表から汲み取るべき事実です。
そしてそこに付け加えて私は、自分自身の見解として、森以外の要因として「水」を考えている、と言っている訳です。
そして私のこの見解は、「いきなり出て来」たものでは有りません。今回の発表の前から、皆さんのヒンシュクを買う程度に繰り返し述べています。それも「事実」です。
私からすれば、自分の見解をキチンと主張することなく、只他人の主張を批判するだけの方が不思議です。
>念のために申し添えておきますが、私はヒトの起源が何説で説明されても構いません。
私も繰り返し述べているように、どこで有っても構いません。森の中で納得ゆく説明が付けばそれが一番「最節約」だと思っています。
しかし、今のところそれは私の納得の行く所でない。と言うことですね。
何故森の中で納得ゆかないか、アクア説に何故説得力を感じるか、それも私は繰り返し述べて来たつもりです。勿論それを批判なさるのはご自由です。
出来たら上で述べたように、ahさんご自身の見解を対置して貰って、その中身で議論した方が生産的だと思います。期待しています。
>現状では水生の類人猿が見つからないことから、ヒトが水生であったと考える理由はない、というだけです。
サヘラントロプスは今より100倍も広かったチャド湖周辺で、魚やワニの化石等、700点にも及ぶ動物化石とともに発掘されています。
サヘラントロプスの頭蓋骨化石自体から、或いは地層からの放射年代測定が出来なかったので、それら動物の、いわゆる指標化石によって年代が推定されています。ですから水辺と無縁では決してないのです。
発見者のブルネは、その棲息環境として、現在のオカバンゴのような湿地帯を想定していますし、ネイチャーの表紙はサヘラントロプスの復元された頭が、オカバンゴを見下ろしているレイアウトでした。
しかし実際の所これからもどこで有れ、直立2足歩行のキッカケを直接証明する化石の発見は難しいでしょうね。
アルディピテクス以前の化石は、私の知る限り、カダッパ、オロリン、サヘラントロプスだけです。しかも全て部分化石。小さな机に載ってしまう程度でしょう。初期人類の化石発見は、それ自体奇跡的なことなのです。
今後、サヘラントロプスの頭蓋骨だけでなく、直立2足歩行を直接証明できる、例えば骨盤、或いは大腿骨でも発見されれば、700万年前、分子が示す分岐年代直後の直立2足歩行獲得のメカニズムとしては、多分「森の中」も選択肢から外れると思っていますけど。
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