ゴリラ祖先種化石発見、質問に答えて

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07/08/23 の「ゴリラの祖先種化石、エチオピアで発見」に関して、

>ヒトと他のヒト科との分岐年代が数百万年古くなることが、なぜサバンナ説やイーストサイドストーリーに「難題」になるの?

と言う質問が有りました。
以下はその回答、或いは反論です。

逆にお伺いしますが、いわゆるサバンナ説やイーストサイドストーリーが主張している「ヒト化の契機」はなんだと思っていますか?

 

「イーストサイドストーリー」とその破綻

東アフリカを南北に貫く大地溝帯の東側(イーストサイド)にサバンナが広がったのは、330-240万年前頃(「裂ける大地、アフリカ大地溝帯の謎―― 諏訪兼位著」から)とされています。

イブ・コバンが「イーストサイドストーリー(以下、ストーリー)」を提唱したのは1984年ですが、その後、より古い人骨化石の発見が相次ぎます。

1992年、アルディピテクス・ラミダス(440万年前)、1996年、アルディピテクス・カダッバ(580万年前)、2000年、オロリン・ツゲネンシス(600万年前)等など。
イーストサイドにサバンナが広がる遥か以前に、既に共通祖先との分岐が有ったと言うこと自体、私は「ストーリー」の崩壊を意味すると思うので、前回「アルディピテクス・ラミダス(440~580万年前)化石の発見の頃から辻褄が合わなくなります。」と書いたのですが.........、ご理解頂けなかったでしょうか。

更に2002年発見のサヘラントロプス・チャデンシス(トゥマイ)に至っては、その古さ(600-700万年前)と共に、発見された場所が「イーストサイド」から2500キロも離れた中央アフリカのチャドです。
だからこそ提唱者のイブ・コバン博士自身、事実上「ストーリー」を撤回し、「トゥーマイの発見によって.........人類の起源については調査する地域を広げ、研究を評価しなおす必要が有る(NHKスペシャル『人類誕生 最古の化石トゥマイの物語』より)」と述べているのです。

質問者さんが、若しそれでも「ストーリー」が影響を受けず、安泰だと言われるのでしたら、逆にその論拠を聞かせて下さい。

今回の諏訪元博士らによる「ゴリラの祖先化石発見」の意義について言えば、その古い年代と共に、次のようなことが言えるでしょう。

イブ・コパンが「ストーリー」の着想を得たのは、アフリカの動物相分布の偏りだったようです。そのことについて、つい最近(2007/8/25付け)発行された「最初のヒト(アン・ギボンズ著、新書館)」に、丁度手頃な記述が有りますので、要約しながら紹介してみます。

イブ・コパンがその着想を得た1982年当時、それに先立つおよそ20年間の研究者による活発なアフリカ遠征調査によって、東アフリカだけで2000点のヒト科化石、数十万点の動物化石が収集されていました。
しかし、東アフリカではチンパンジー化石もゴリラ化石も、只の一点も見つかっていませんでした。又、現生チンパンジーもゴリラも「イーストサイド」には住んでいません。

逆に当時、300万年前以上前のヒト化石で、「イーストサイド」以外で発見されたものも又、只の一点も有りませんでした。
つまり大地溝帯を境に、ヒトとアフリカ産類人猿の古い祖先との間に、ハッキリとした地理的線引きが出来るだろう、とコパンは思い至った訳です。

当時大地溝帯を中心とした東アフリカの大規模な地殻変動の様子は、地質学の研究で既に分かっていました。
チンパンジーなどの現生類人猿の祖先は、大地溝帯によって隔てられた西側の森林地帯に留まりました。
コパンはこれに新しい着想を付け加え、人類祖先は、以前より乾燥化し開けた環境である大地溝帯の東側、つまり「イーストサイド」に取り残され、それに適応していった、と言うシナリオを書いたのです。

このモデルは、何故チンパンジーとヒトとが遺伝的にかくも近いのかと言う謎、それなのに何故両者の祖先化石が同じ地域で見つからないのか、と言う謎をいとも簡単かつ明快に答えてくれるし、地理的隔離も説明できます。
コパンは、このモデルに「イーストサイドストーリー」と命名し、ニューヨークのアメリカ国立自然史博物館での講演で発表した訳です。

 

「イーストサイドストーリー」への反証仮説

.........と、このように記述した後、アン・ギボンズは「最初のヒト」の中で、続けて次のように書いています。

イースト・サイド・ストーリー説が間違っているとすれば、その誤りを証明するには大地溝帯の東側でアフリカ産類人猿の化石を見つけることが必要になるだろう。もしくは、西側で初期人類化石を見つけること、でもいい。」と。

西側の初期人類は、既にトゥマイと言う形で見つかっています。「最初のヒト」の中でも相当のページ数をトゥマイに費やしています。
そして今回、東側でゴリラの祖先化石が見つかったと言う訳です。

前回書いたように、ドーキンスは「難題をつきつけられることになる」と「祖先の物語 上」で書いていますが、私は、イーストサイドストーリーは破綻したと思っています。

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このページは、雄が2007年8月26日 22:17に書いたブログ記事です。

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