呑川-2(呑川本流、下流部)

 

呑川本流-開渠部

東急大井町線の緑が丘駅近く、東京工業大学脇から呑川は開渠として姿を現す。深い三方垂直コンクリート護岸とそれを囲むフェンスで、残念ながら水辺としての趣には欠ける。
又常に水質問題(汚れ、臭気)が話題に挙がる。

水質問題

武蔵野台地の湧水を殆ど唯一の源流とする東京の他の川(多摩川や荒川を除く)の御多分にもれず、呑川も近代に入り水量が激減、或いは途絶えた。その流れを維持するため、これも他の川(目黒川、渋谷川、或いは小平市から下流の玉川上水や野火止用水など)と共通に、高度処理再生水を流している。
呑川の場合、新宿区上落合にある落合水再生センターで高度処理された、見た目はきれいな再生水が開渠開口部から流されている。
元々の呑川の上流部と何本かの支流は全て暗渠化され、地上部は親水エリアや緑道が整備、地下の暗渠は下水道幹線に転用、それを集めた「呑川幹線」が開渠部と並行して処理場に送られている。元々の呑川を流れていた湧水は従って普段一滴も呑川には流れないことになる。その意味で呑川の今の源流は落合水再生センターだと言える訳だ。
こう言う経過も目黒川や渋谷川と共通。

しかし他の川に無い、呑川だけの特殊事情がある。それが合流式下水道方式。

合流式下水道方式

合流式下水道とは、要するにトイレを含む生活排水と雨水を分離せず、一緒に下水に流す方式。
普段、晴天の時は家庭排水だけが呑川とは別に下水を流れて処理場まで行くのだが、雨が降って量が増えるとあっと言う間に溢れて、し尿を含む家庭排水が雨水と共に呑川に注ぎ込んでしまう。当然見た目も汚いし、沿線の悪臭も深刻らしい。

下流、感潮域

特に問題になるのが、池上辺りから蒲田を通って海に注ぐまでの下流域。
下の地形図を見てもらうと分かるのだが、池上本門寺のある池上地区辺りまで、呑川は武蔵野台地上を流れる。標高も有り、勾配もそれなりに有って流れが滞ることはない。雨の日の増水時は兎も角、普段はきれいな再生水だけが流れている。
しかし池上橋を超えたあたりから東京低地に入り、勾配もなくなり海に近づくにつれ水が滞留する。滞留するだけでなく池上橋辺りを境に感潮域となって、潮の満ち干に伴って逆流さえすることになる。
水は白濁、或いは黄緑色になり、水面にはスカム(浮遊汚泥)が浮き上がることになる。当然悪臭もある。季節による違いも有るのだろうが、蒲田の町中をこの状態の水が常時流れて(滞留して)いる訳だ。
蒲田からやや下流の橋の上で、地元の人と思しきオジサンが川面を見ながら、「きったない川だなあ」とつぶやいていた。

目黒川にしろ渋谷川(下流は平川)、神田川なども海に近づくにつれ水の滞留は見られるが、分離式下水道方式により、し尿を含む家庭雑排水が入り込むことのないこれらの川には今のところスカムなどの極端な水質悪化は見られない。

 

地形図

クリック、拡大表示でご覧ください。

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撮影Map

クリックするとGooglemapと連動して表示されます。 (2018年、突然Googlemapでの表示が不調となり、解決の方法も有りません。しかしmap上の位置関係は判別できますので、引き続きそのまま表示します)。

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呑川開渠部スタート

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住宅街の一角に、呑川に関する小公園

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遠くに多摩川への放水施設が見えてきた

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多摩川への放水路

前方、中原街道の地下に多摩川へ通ずる放水路が作られている。増水時、水の一部をここから流す。

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中原街道に掛かる石川橋近くの石碑

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川底

川底には大小の四角形の升状の切り込みがある。湧水の湧き出し用か水質浄化の為のものか。
升の周囲は藻が繁茂して緑色になっているが、升の中はそれがない。新鮮な水が湧き出していてここは富栄養化されていないからだ、との書き込みを見たことがある。カルガモも新鮮な水辺がいいのだろうか。

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洗足流れ合流

呑み川支流の一つ、清水窪湧水を源流とする洗足池からの流れが、ここで合流する。掛かっている橋は「本村橋(ほんむらはし)」。

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合流地点から少し下流。これは何だろうか?

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六郷用水

池上は呑川と六郷用水の交差地点だったようだ。立っている案内板には以下の文面があった。

六郷用水と呑川

六郷用水北堀は、南北引き分けから東進してくると呑川に突き当たります。そこで呑川を横断させ、新井宿(現在の中央一帯)方面へ流すため、「八寸」と呼ばれる堰が設けられました。
この堰で分流された流れは、北上して旧池上道の山下橋(現存しない)をくぐり、養源寺橋の上流で呑川と一旦合流しました。ここは、少し下流に設けられた堰によって、呑川からの水量を確保し分流された分水路の跡です。

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感潮域

海に近くになるにつれ水の流れが滞る。滞るだけでなく潮の満ち干によって満潮時には逆流することになる。
流れがなくなったとき水は当然汚れる訳だが、特に合流式下水道方式の呑川ではその影響は深刻となる。

曝気装置?

1991年(平成3年)、蒲田駅手前に屋形船の形をした曝気装置を4代設置、川に空気を送り込んで水の浄化を始めた、との記事があったのでこれかな?と思いながら見たのだが、同じ記事の中で、1997年に、藻や貝の付着による故障多発のため撤去、とあったから、違うのかな?

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蒲田駅

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スカム(浮遊汚泥)

蒲田と言う大都市を流れる川がこれではなあ!!
近隣だと思われる人が「汚いなあ」と言いながら橋を渡っていた。

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親水公園らしい施設

しかしやはり水がきれいであってこその親水エリアなんだが。実際水に親しんでいる人はいなかった。

この後、呑川に沿っての道が途絶え、迂回しながら下流を目指すことになる。

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呑川河口

再度呑川沿いの道に出る。

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海老取川への合流

写真中央、右側奥から呑川。手前の海老取川に合流。海老取川は直ぐに東京湾に注ぐ。

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海側からの呑川

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東京湾に沿って

右側の高架は、首都高速1号羽田線。

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対岸は昭和島

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旧呑川

洪水防止などの為に呑川を真っすぐに流路変更(新呑川)した後、かっての旧呑川跡が緑道として埋め立てられた。
水門が残っている。

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水門裏

こちらは水門裏。正面前方、水門の向こうは東京湾。僅かな区間、水路が残されていてボートの係留地として使われているようだ。

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旧呑川緑道

旧呑川の跡は緑道となっている。ここは暗渠などでなく完全に埋め立てられているようだ。
この緑道を、今度は下流側から遡ることとする。

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水辺があったり(清流とは言い難かった)東屋が有ったり、緑道も結構広い。

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都道131に掛かる橋をくぐって

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緑道の終わり

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宝来橋

新呑川に掛かる宝来橋につながる道路で、旧呑川緑道は終わる。
おそらくこの辺で、旧から新呑川への付け替えがあったと思われるのだが、今回その痕跡は分からなかった。

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宝来橋から下流方向。

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番外編、池上本門寺と本門寺公園

池上地区、呑川から直ぐのところに池上本門寺がある。
伽藍も中々のものだが、地形図を見て分かる通り島状の台地に建っていて、隣接する本門寺公園と併せ地形フェチとしてはこちらも興味を引かれる。

 

武蔵野台地の端

池上本門寺は武蔵野台地と東京低地の境目に立っている。正面、山門に上る石段は正に大地と低地をつなぐ崖にある。

 

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力道山の墓

上の五重塔からほど近いところに力道山の墓がある。案内板も有った。
池上本門寺ほどであれば有名人の墓も沢山あるだろうに、案内板はこの力道山の墓だけのようだ。確かに構えはなかなかのもの。

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本門寺公園

池上本門寺に隣接して、本門寺公園。
大地上と谷の複雑な高低差の中に有って、鬱蒼とした林と、崖下の、注文通りの湧き水の池(今は循環させているようだが)。

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呑川下流側からの、池上本門寺と公園のある台地を振り返る。

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