井草川水系ー1(切り通し口と源流部)
「杉並地内水路網(暗渠の迷宮)全体像」も参照のこと
暗渠の迷宮、井草川源流部-1(井草川源流、切通し公園から三谷公園)
妙正寺川と井草川
妙正寺川は東京を流れる1級河川で、杉並区妙正寺池に端を発し豊島区高田で神田川に合流する長さ9.7kmの川である(…とされている)。井草川はその妙正寺川の支流であり、妙正寺池の上流部に広がり現在全て暗渠化されている(ここでも「水路」「流れ」などと記載する場合も有りますが、全て暗渠・緑道です)。
しかしかって、現在の妙正寺川を含めた流域全体を井草川と称していたらしく、途中妙正寺池から注ぐ妙正寺川の方が、その支流の一つに過ぎなかったのだそうだ。
暗渠の迷宮、井草川
今回取材してみて驚いたことがある。鹿の角のように入り組んだ妙正寺川と井草川の支流が、ホンの小さな傍流と思われるような川筋まで含めて、、それが暗渠・緑道としてちゃんと住宅街に残っていることだ。ここまでの支流網が形として残っている河川は、武蔵野台地上ではおそらく他に見られない(その後、桃園川を歩いてみて同じ「暗渠の迷宮」を体験、今回二つのエリアをまとめて一つの項としました)。勿論その支流・傍流の大半は名称さえない。正に「暗渠の迷宮」だ。ここでも説明の便宜上、勝手に支流に名前を付けて(仮称)として扱っています。
今回その暗渠の迷宮を、Googlemapストリートビューの助けも借りて、極力忠実に辿ってみた積りだが、お陰でページ数が相当膨らんだ。しかしおそらく見逃している川筋もアチコチ残っているだろう。
源流、切り通し公園と六ヶ村分水
井草川主要源流の一つとされる切り通し公園は、三方を高台に囲まれた谷地形の斜面からの湧水を水源とし、この水が井草川の谷を刻み、いわば自然の切り通し地形を作ったのだと思われる(地形図参照のこと)。
同時にここは「六ヶ村分水、切り通し口」(下記参照)の取水口でもあった(「杉並区周辺水路網全体像」参照。近隣の人の話では、かって滝が有ったとされる程に水が豊富だったらしいが、この水量は六ヶ村分水からの水も含めてのことだろう。
結節点、三谷公園
三谷公園は切り通し公園からの2本の流れと、井草川最上流部とされる原窪支流(仮称)を合わせた3本の流れが合流し、井草川として1本にまとまって妙正寺池目指して流れてゆく、いわば井草川源流部の結節点とも言える場所である。
切り通し公園と三谷公園は、間に杉並工業高校を挟み直線距離で200メートル強。この僅かなエリアに源流部3本の支流がが絡み合う。
西山田んぼ
なお切り通し公園から東側に伸びる井草川の谷筋には、この流れを利用した田んぼが広がっていたようだ。
特に源流部から下のエリアは、所有者の名前からとった「西山田んぼ」が広がっていたらしい。現在の杉並工高はその田んぼを都が買い取って建てたのだそうだ。三谷公園とか都立農芸高校なども同じく、元はこの田んぼだったんだろう。
切り通し公園の近くに、西山屋敷林と言う、「ヤマ」と呼ばれる杉並区でも最大級の林と、その中に、如何にも旧家と思しき「西山家」の屋敷がある。多分この西山田んぼの地主だった人だろう(勝手な憶測で、間違っていたらゴメン)。
この田んぼの用水として使われていたことが、今に残る「暗渠の迷宮」を作りだしたのではないだろうか。田んぼにまんべんなく水を行き渡らせる為の必要がその痕跡として(一部が)残っているのだ。
地形図
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全体の地形図はこちら
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撮影Map
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2018年、突然Googlemapでの表示が不調となり、解決の方法も有りません(Googleの仕様変更かも)。しかしmap上の位置関係は判別できますので、引き続きそのまま表示します。
※ 井草川上流域全体のPhoto_mapリストは、こちら。
枚数が多い為、読み込みに時間が掛かります。
六ヶ村分水切り通し口
青梅街道(写真右)に沿って流れていた六ヶ村分水の取水口の一つ「切り通し口」の、おそらくここがその現場だと思われる。
往時と比較して格段に広く整備された青梅街道に、現在、六ヶ村分水も切り通し口も痕跡は全く見られない。写真左に井草川源流とされる切通公園と、そこから続く水路跡が有ることで、この場所が六ヶ村分水からの取水口だと推測される。
※ 切り通し口周辺の航空写真(Googlemap)はこちら
前方、切通公園
井草川源流、切通し公園
斜面に広がる公園の、西側最上部から見た切り通し公園。三方を崖状地形に囲まれた谷頭部から水が湧きだし、斜面を流れ落ち、谷を刻んで伸びているので「切り通し」の名が付いたのだろう。この谷頭からの湧水が井草川の源流となった。「昔はここに滝が有った」と地元の人が言うのは、この斜面を流れ落ちる水を指しての形容だろう。
縄文遺跡
湧水に古代遺跡は付き物。
東側(下側)から見た切り通し公園
写真ではあまり傾斜の様子は分からない。この傾斜を流れ落ちる水が、地元の人には滝のように見えたのだろう。
公園下のここで2つに分かれた水路がスタートする。
二股に分かれる井草川源流の緑道
公園の下で、水路(暗渠)は二つに分かれる。
正面は井草川本流の暗渠・緑道。左側に短い傍流とも言うべき流れがある。
便宜上、正面の流れを「源流-1」、左側の流れを「源流-2」と呼ぶ。
「源流-1」(仮称)
最初に本流とも言うべき「源流-1」を辿る。
切り通し公園を背に、右側(東)に向かって続く。写真左側は都立杉並工高の塀。
折れ曲がりながら都立杉並工高の脇を通る。
写真つき当りで、建物と工高の間の、更に狭い道に入る。
都立杉並工高敷地に入る「源流-1」
暗渠道は、ここで都立杉並工高の敷地にぶつかる形で終わる。暗渠はそのまま工高敷地内を進み、三谷公園脇の暗渠(下掲)に続くと思われる。
学校敷地に暗渠用水が組み込まれていることは良く見られる。
杉並工業高校敷地から出る「源流-1」
三谷公園の南側に水路(暗渠)が確認できる。水路は写真右側に向かって公園の周囲に沿って伸びている。
写真左側に杉並工業高校が有り、敷地に入った「源流-1」は、位置的に見てもこの水路に繋がっているものと思われる。
公園に沿って続く水路
「源流-2」(仮称)
一旦切り通し公園に戻り、もう1本の源流を辿る。こちらは比較的短い。
切り通し公園を出た流れは、道路を超えて住宅街に入る。
ここで都立杉並工高(正面)にぶつかり、ひとまず緑道は終わる。切り通し公園からの距離、約120メートル。
ここでも水路は公立高校の敷地に入る。よくあるケース。
湧水と遺跡
上の写真の道路を左に50m程行ったところにある井草遺跡の案内板。
水の便の悪い武蔵野に於いて、湧水の有るところ、必ずと言っていい程先人たちが痕跡を残している。
杉並工高敷地を出る「源流-2」(仮称)
都立杉並工高(写真正面)敷地に入った水路は、ここで工高敷地を出る。
工高側から
道路を超えて都立農芸高校井草農場にぶつかる。水路は農場手前で右に曲がる。
※ おそらくこの辺のどこかで、原窪支流(仮称)が合流しているものと思われるのだが、痕跡が無く分からない。
道路を超えて
緑道左側は都立農芸高校井草農場。右側はマンション。
井草川緑道に合流する「源流-2」
写真正面の直ぐ右に三谷公園。
公園からの井草川緑道にぶつかり、合流して左側に流れてゆく。
井草川緑道から見た合流地点
写真背後に三谷公園がある。
この合流地点の70メートル先、「源流-1」からの合流がある。
「原窪支流」(仮称)
確認できる井草川最上流部
切り通し公園からの流れとは別に、上井草4丁目辺りから暗渠と思しき通りが確認できる。ネット上の記載を見ると、ここが現在確認できる井草川の最上流部で有るらしい。源流(切り通し公園)とは別に「最上流部」との表現は少し違和感があるが、そうらしい。
便宜上「原窪支流」(仮称)と呼ぶ。
千川上水からの分水と原窪
「原窪」とはこの辺が浅い窪地になっており、かって「下石神井村原窪」と呼ばれていたらしいことから。
ここから北に直線距離で約300メートルの所に千川通りが通っている。切り通し口も千川上水からの分水口だが、この原窪支流も千川から助水を受けていた。その分水路もこの辺を通っていたらしく、この低地を超える為に土提を築きその上に水路を通していたそうだ。
金太郎の車止めは、杉並区の暗渠・緑道の標識。
近代遺産、暗渠蓋かけ
川を下水化し暗渠とした際に、上に蓋を掛けて人が歩けるようにしたもの。現在は道路となっている。
井草川ではここだけに残る貴重な近代遺産だとのこと。
暗渠終了
ここで暗渠は一般道に紛れてしまう。
しかしおそらくこのまま直進して、正面奥の都立農芸高校井草農場にぶつかる。その先痕跡が消えてハッキリしないが、農場手前で右に曲がり「源流-2」に合流するものと推測。
三谷公園
一部重複するが、「源流-1」、「源流-2」の合流地点から少し遡り、三谷公園からの井草川緑道を見てみる。写真は公園西側、杉並工高を背に見た公園。
結節点
三谷公園は切り通し口・公園からの「源流-1」「源流-2」、及び「原窪支流」の三本が合流し、井草川として流れ始める出発点。いわば結節点と言える。
都立杉並工高
道路を挟んで三谷公園の直ぐ脇に都立杉並工高がある。
井草川緑道スタート
三谷公園東詰めから、井草川緑道がスタートする。
「源流-2」合流
公園から外れるとすぐに「源流-2」の合流点となる。おそらく「原窪支流」(仮称)も一緒に合流していると思われる。確信はないが。
「源流-1」合流地点
三谷公園、及び「源流-2」合流地点から70メートル程のところ。「源流-1」が右から合流して、井草川(暗渠・緑道)として進む。
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