飛水峡-2018

 

飛水峡ー日本列島誕生の由来を示す地形と地質の景観

飛水峡は岐阜県加茂群七宗町から加茂郡白川町までの全長約12Kmにわたる峡谷。
流れに沿って国道41号線と高山本線が通っている。

日本列島の背骨

実は飛水峡を知ったのはNHKの『ジオジャパン』と言う、日本列島の成り立ちを取り上げた番組からだった。ここは日本列島の成り立ちを示す一つのキーポイント地で有るらしい。
飛水峡の両岸は「チャート」と呼ばれる、非常に固い岩石層が続いているのだが、ここのチャートと全く同じものが、1400キロも離れたロシアのハバロフスクで見られるのだと言う。つまりかって大陸に有ったこの地層が、大陸の縁が引きちぎられる形で剥がされ今の地まで移動、それが今の日本列島の骨格を形成していると言う訳だ。剥がされた割れ目は今の日本海になっている。

飛水峡とチャート(chert、角岩)

チャートは堆積岩の一種。主成分は石英や水晶と同じ二酸化ケイ素(SiO2)で、その成分の殻をもつ放散虫等の微生物の死骸が堆積してできた岩石(生物由来でなく熱水噴出孔からの成分由来のものも有ると言う)。遠洋深海底で堆積されたもので、その為陸からの砂や泥、火山灰などを含まず、炭酸塩鉱物も深海の水圧で水溶されて含まれない。深海の水圧で押し固められ極めて硬く、堆積のスピードも1000年に1mm或は0.3mmとか言う超スローだと言う。
石灰岩も同じく生物由来の堆積岩だが、サンゴなど、光合成によって育つ浅い海での遺骸が堆積したもので、炭酸カルシウムを主成分とする。その点で同じ海洋性堆積岩でも大きく違う。

チャート岩そのものは上述のように、砂・泥・火山灰などを含まないが、堆積に伴い砂岩や泥岩などを挟んで層状を呈している場合が多い。深海にまで及ぶ大規模な「地球事変」によるものだろうか、或はプレートによって運ばれ陸地に押し上げられる際、複雑に互層した結果の複合体(コンプレックス)なのだろうか。
又含まれる金属元素などによってさまざまな色を呈する。例えば飛水峡にも赤い色のチャート層が見られるが、当然鉄分(酸化鉄)を含んだ層であると言うことと、この層が堆積した時代、旺盛な植物の繁茂が続き、地球規模で酸素濃度が高かったと言うことが分かる。

チャートも石灰岩も日本の至る所で見られるが、東京でも奥多摩の海沢川上流部などで特徴的なチャート岩を見られる。
又硬い、と言うことで風化を免れたチャートが河床の礫の中に頻繁に見られる。

渓谷と甌穴群(おうけつぐん)

硬い、と言うことで水の浸食は外側に広がらず、河床を深くえぐり渓谷を形成する。
狭い渓谷を流れる激流によって運ばれた石が、岩盤表面に引っ掛かり流速による渦巻き運動でそこに円形の穴をあける。甌穴(ポットホール)と呼ばれるが、飛水峡の「甌穴群」は有名で国の天然記念物になっている。

日本最古の岩石

七宗町上麻生付近の飛騨川河床で、日本最古(20億年前)の岩石が見つかっている(もう1ヶ所、島根県隠岐島後)。
…と言っても飛水峡のチャートや砂岩の地層全体が20億年前に形成されたと言うことでは無く(地層の形成は中生代の三畳紀~ジュラ紀ー約2億4000万~約1億6000万年前)、地層に挟まれた礫岩層の中に20億年前とされる片麻岩礫が見つかったと言うことらしい。つまり20億年前に当時の大陸に分布していた岩石が、約2億年程前に礫として運ばれ海底に堆積、地層に紛れ込んだのだろう。
いずれにしてもこの地が、列島の中でも最も古い時代に形成されたことには違いない。

 

地形図

クリック拡大表示でご覧下さい。

hisui_tikeiz.png

 

撮影Map

クリックするとGooglemapと連動して表示されます。

2018年、突然Googlemapでの表示が不調となり、解決の方法も有りません(Googleの仕様変更かも)。しかしmap上の位置関係は判別できますので、引き続きそのまま表示します。

hisui_map.jpg

 

    

 

 

付知峡 Photo Gallery

下の写真をクリックして下さい。Photo album型式で写真が表示されます。「次へ」「前へ」で表示写真を切り替えて下さい。

hisui.png

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://y-ok.com/mt-tb.cgi/651

コメントする

INDEX

You Tube 動画

比較的最近始めたContentsです



岐阜に移住・拠点にして


岩と清流・歴史と文化の地、岐阜を拠点に


木曽川水系

飛騨川水系

長良川水系

歴史の街並み

つわものどもが夢の跡

安曇野に身を委ねる

陸奥(みちのく)紀行

酒田山居倉庫、十和田・奥入瀬、酸ヶ湯、仏ヶ浦、本州最北端大間、恐山、尻屋崎、五所掛け温泉、八幡平、玉川温泉、乳頭温泉、角館武家屋敷、銀山温泉、山寺、裏磐梯、五色沼・檜原湖、大内宿
出羽三山神社、月山弥陀ヶ原、十二湖・日本キャニオン、竜飛崎、八甲田田代平湿原、蔦沼、奥入瀬渓流

武蔵野と水辺


「舞台は武蔵野」 - 全てはここに

「関東平野・武蔵野」私的覚書 - 鵜呑み厳禁

母なる川、多摩川の風景

奥多摩・御岳

多摩川上総層群

玉川上水

武蔵野の地形地質との折り合い、奇跡の43Km

野火止用水 - 知恵伊豆、最初からの本命?

千川上水

水道道路ー都会を貫く直線道路

国分寺崖線

野川 - 武蔵野の湧水を集めて

仙川 - 野川最大の支流で水のミステリーの中心

深大寺周辺 - 国分寺崖線の奥座敷

中仙川緑道と入間川

矢沢川-九品仏川斬首で出来た等々力渓谷

六郷用水(次大夫堀)・丸子川

丸子川支流-谷戸川

立川崖線と青柳断層

ハケの清水と府中用水

残堀川

立川崖線終焉

南北崖線軸と山の手台地

皇居

渋谷と渋谷川

目黒川水系

神田川水系

杉並地内「暗渠の迷宮」を辿る

呑川水系

石神井川水系

山の手台地 Others

武蔵野台地北縁

落合川(黒目川支流)


その他