史的唯物論
マルクス主義の歴史観で、唯物論的歴史観(唯物史観)とも言う。
史的唯物論は弁証法的唯物論の見地に立って社会の構造・その発展の原動力・その法則を明らかにしたものである。これによって社会とその発展とに関する見解は、従来支配していた観念論的歴史観や地理的唯物論の誤りを克服して新に科学的な歴史観となった。
史的唯物論は人間の願望や意識又は超人的な精神的存在や神などによって歴史を説明するのではなく、人間社会とその歴史的発展は、人間が生存し活動する為に必要な生活資料の生産、すなわち物質的生産に基づくことを明らかいにした。
物質的生産は一方では人間が自然に働きかけて生活資料を得る生産力と、他方ではこの生産における人と人との関係である生産関係とから成り、両者は統一してその時代の生産様式を形作る。
生産様式は社会の物質的な骨組みであり、生産力と生産関係との矛盾を通じて変化・発展し、人類の歴史は生産様式の違いによって、原始共同体・奴隷制・封建制・資本主義・共産主義の五つの発展段階に分けられる。
それぞれの生産様式のもとで、それぞれの政治や精神活動の所産(イデオロギー)等の社会的諸現象が生産関係を土台として形作られる。
政治や精神活動の所産は、究極的には土台に規定されつつ、一定の独自性を持って発展し、土台に対しても一定の反作用を及ぼす。従って史的唯物論は経済的歴史観の一面的見解とは根本的に異なって、政治や精神活動の所産の大きな意義を承認する。
社会の矛盾は、階級社会では生産力の発展を担う革命的階級と、現存の生産関係を保持し続けようとする保守的階級との間の階級闘争となって現れ、階級闘争は社会発展の生きた原動力となる。
史的唯物論は、物質的生産が社会とその発展において果たす意義を明らかにしたことによって、物質的生産に携わる人民大衆の歴史における創造的役割を明確にした。こうして史的唯物論は今日、弁証法的唯物論とともに労働者階級と勤労者全体の革命闘争を新に科学的に導く指針である。→歴史観、歴史における大衆の役割。
(社会科学事典 ―― 新日本出版社)より
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