眼 a la carte

眼の常識・非常識、アレコレ

    

 

■ 利き目

皆さん、「利き目」って知っていましたか?
利き腕や利き足については分かるでしょうが、目にも有るんですよ。 そしてそれは簡単に調べることができます。

  1. 両眼が開いている状態で、片手を伸ばし何か目標物を指差します。
    目標は、少し離れたものなら壁の時計でも電柱の先でも 何でもかまいません。ただ犬や自動車など、動くものはだめです。
  2. 目標をきちんと指差したら、そのまま指も頭も動かさず、目だけ片方ずつ交互に閉じます。
  3. 片方の目が開いているとき、指は変わらずに目標物を指し示しているのに、別の目のときは指が目標を外れます。
  4. 目標を指し示しているとき、開いている目が「利き目」です。

「利き目」は、例えば両方の目で屈折が違う場合で、メガネを作る際に問題になる要素です。
近視であれ、遠視であれ、左右の眼の屈折(度数)は概ね同程度であるのが普通です。しかし中には何らかの事情で、左右の眼の屈折に相当のギャップが有ることがあります。例えば、右目が-1.00,左目が-3.00だったとして.........、

それぞれの眼にあわせて、左右で度数の違うメガネを作ったとすると、確かにそれぞれの眼の視力はきちんと矯正できるでしょう。しかし、左右のレンズの度数が大幅に違ってくると、その度数の違いによって、見える物の像の大きさが変わってきます。多少の違いは人間の脳で処理出来るのですが、有る程度以上のギャップは処理できず、物が2重に見えたりします。
こう云う場合、片方の矯正視力を有る程度犠牲にしても、左右の度数を「利き目」に合わせてメガネを作る、と言うことをするのが普通です。

■ 近視の人が、眼を細めて見ることが有る、何故?(瞳孔の常識・非常識)

近視の人が、眼を細めて見ることが良く有ります。実際そうすると多少なりとも良く見えることが有ります。これは何故でしょうか。
眼を細めるとその分、眼に入る光量が制限され、丁度カメラの絞りを絞ったと似た状況になり、その結果、視写界深度が深くなりピントの合う範囲が広がるのです。

.........と言う説明を昔読んだ気がします。
そしてそのまま納得しているのですが、最近そう言うことを明確に書いてある文章に接していません。
だから本当の所は分かりません。
でもなんとなく説得力の有る説ですよね。

■ 人間の瞳とカメラの絞り

瞳孔と虹彩

眼を細めたときに、視写界深度が深くなるかどうか、は置くとして、「瞳孔」の大きさは間違いなく視写界深度に影響します。
眼を正面から見たとき、茶色の虹彩(色は人種によって違う)に囲まれた真ん中の黒く見える(実際は透明)部分が瞳孔です。

瞳孔反射と視写界深度

瞳孔は、外界の明るさの違いに応じ、自動的に大きさを変え眼に入る光の量を調整します。これを瞳孔反射と云い、虹彩がその機能を受け持ちます。
明るいときには瞳孔が縮み(縮瞳)、暗いときに広がり(散瞳)します。その変化は直径1mmから8mm位とされています。面積は直径の二乗に比例しますから、ほぼ64倍の光量調節が出来ることになります。
カメラの「絞り」に該当する機能です。

つまり、明るいほど絞りが絞られ、視写界深度が深くなる訳です。
カメラでは、「ボケ味」を出す為、明るいところでもあえて絞りを開く場合が有りますが、人間の「瞳孔反射」は、交感神経と副交感神経の働きで自動的に行われ、「マニュアル操作」は出来ない。

瞳孔反射と収差

なお、瞳孔(絞り)の大きさは、視写界深度の深さに影響を及ぼすだけでは有りません。
カメラにしても眼にしても、レンズは多かれ少なかれ「収差」がつきものですが、収差はレンズの周辺部ほど顕著です。レンズの中心部だけを使うことが出来れば、収差の影響も最小限に抑えることが出来る訳です。
つまり、明るいところほど収差も少なくなる理屈です。

人間の目は、「遠近調節」と「瞳孔反射」が連動していて、近点に調節すると縮瞳します。
近くを見ようとして調節すると、水晶体の曲率が増加し、その結果視写界深度が浅くなり、収差も大きくなる。縮瞳はこの弊害を補正する機能を持ちます。

人間の眼、猫の眼、馬の眼

人間の目は、散瞳、縮瞳に共通して円形です。

猫は、この瞳孔の形が縦長のスリット状になっています。明るいところで猫の眼を見ると、真ん中に縦長の細い瞳が見えますね。
明るいところで、瞼を半分閉じた状態では、このスリットの上下が瞼で覆われ、真ん中だけから光を取り入れることになります。
眩しさを防ぐとともに、視写界深度を深め、収差を抑えることが出来ます。

馬の瞳孔は、猫と逆に水平方向に広がっているそうです。
草原で幅広い視野を得るのに好都合なのでしょう。

瞳孔と紫外線、サングラス

眼にとって紫外線は大敵です。
白内障は、水晶体が白く濁り視界の透明性が損なわれる病気ですが、 水晶体のタンパク質を白濁させる主な原因となるのが紫外線です。
この紫外線防止にメガネは効果が有ります。窓ガラスなどでも紫外線をある程度遮断しますから、メガネを掛けているだけでそれなりの紫外線防止になります。
勿論、紫外線防止効果(UVカット)を施したレンズならベストです。

サングラスと紫外線の常識・非常識

ところで、では太陽光線をさえぎるサングラスは、紫外線防止にどの程度効果があるでしょうか。
実は、紫外線は「可視光線」では無いので、レンズの色の濃度によって、さえぎられ方が変わると言うことは有りません。 サングラスの「色」は、あくまでも可視光線をさえぎり、眩しさを軽減する効果なのであって、紫外線防止の効果が上がる訳ではありません。

それどころか、色の濃いサングラスを掛けると、それによって瞳孔が開き、逆に紫外線が余分に眼に入ることになります。
サングラス、それも色の濃いサングラスこそ、UVカット仕様のレンズを使うべきです。

    

 

■ フラッシュ撮影と「赤目」現象

暗いところで、フラッシュを焚いて人物撮影をした時、往々にして眼が赤く映っていることが有ります。
暗い所で、瞳孔が開いている状態で、突然フラッシュの強い光が眼に入ると、網膜で吸収しきれない光が眼底で反射されるのですが、眼底には血管が走っており、又視細胞の一種である桿体を構成しているロドプシンも赤い色をしている為(Rhodopsinは、バラ色をした色素タンパク質、と言う意味)その色が写るのです。

「赤目防止カメラ」と言うのも有って、2段階にフラッシュを焚き、最初のフラッシュで縮瞳した後、2発目のフラッシュで撮影する仕組みになっているそうです。

■ 視力は総合的なシステム

「見えること」について、「目玉」の周辺を色々考えて見ました。
しかし実は、人間の視力はカメラなどと違い、単に光学的な問題だけでなく、脳を含めた総合的で、複雑なシステムです。
ここで、そのことについて述べる才は私には有りません。一つだけ例を挙げましょう。

cororhikaku.jpg

※ 左図において、左半分と、右半分は、どちらが色が濃い(暗い)でしょうか。

 

実は、左右の矩形の色の濃さは、全く同じです。試しに真ん中の境界線を鉛筆などで隠して見てください、指でも結構です。

cororhikaku2.jpg


種明かし

上図は左のように、K=45%→K=50%のグラデーションで塗られた矩形を、2個並べたものです。

上図を見たとき、人間は中央の境界線に眼をとられ、そのカラー差が一様に連続しているかのように「錯覚」してしまうからです。つまりカメラのように、対象をそのまま単純に反映している訳でなく、人間の視機能は、脳で相当程度の「編集」をしているのです。
つまり、視力は、脳を含めた極めて総合的、有機的なシステムです。

このことを改めて気づかせてくれるのは、カメラで写真を撮るときでしょう。
例えば真っ赤なトマトは、太陽の下で畑になっているのを見ても、室内で見ても、夜、電灯の橙色の光の下で見ても、蛍光灯の下で見ても、いつも赤に見えます。
洗い立ての真っ白なブラウスは、どこで見ても白いことを簡単に認識します。
しかし、同じ対象をカメラで写真に撮ったら、それぞれの環境によって大きな差が出ます。だからこそ、露光やフィルターを操作して、極力目で見た印象に近い写真になるよう、人間の方で神経を使うのです。

一部「錯覚」を含みながら、人間の目は、非常に高度で複雑な処理を行いながら、外界の情報を取り入れているのですね。

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