暦の起源

二か月のずれ?

皆さん、暦を見てどうして二月だけ28日(4年に一度、29日)だろうって疑問に思いませんでした。七月や八月から「日」をまわしてやれば良いのにって...。

それに、注意深く見てみると(考えると)、9月の英語表記は、Septemberですが、これは同じ英語のセブン、(7)に似てると思いませんか。
そう思って、10月を見ると、Octoberですが、これは「オクターヴ」(8度の音階)や、8本の足を持つ蛸を意味するoctopusと関係が有りそうです。
実は、11月のNovemberも9と関連しているし、12月=Decemberの「Dec...」は、「デカメロン」(十日物語)、「デカログ」(十戒)、「デシリットル」(十分の一リットル)等、10と関連しているのです。

ちょっと変ですよね。実際の月とその表記が、何でこんなに二ヶ月づつずれているのかって。
その辺の事情を見てゆくと垣間見える英雄達の人間臭さ。

昔の暦(ロムルス暦

ところで、今我々が使っている暦は「グレゴリオ暦」と言いますね。

この暦の原型は、古代ローマの「ロムルス暦」だそうです。
ロムルスは時の王様の名前で、大体偉い人というのは、暦やら度量衡やらを支配したがるもののようです。他でもない、我が日本でも天皇の名前を(死んでからですが)元号としています。

「ロムルス暦」の月次を下に書いて見ます。

1月 Martius............31日 ―(今の3月頃)
2月 Aprilis.........‥...30日 ―(今の4月頃)
3月 Maius...............31日 ―(今の5月頃)
4月 Junius...............30日―(今の6月頃)
5月 Quintilis............31日 ―(今の7月頃)
6月 Sextilis............30日 ―(今の8月頃)
7月 September.........30日―(今の9月頃)
8月 October...............31日―(今の10月頃)
9月 November............30日 ―(今の11月頃)
10月 Deccmber............30日―(今の12月頃)
以上1年............304日

ん、なんだコリャ。

10ヶ月で304日だって、これで1年間なの?、それに今の3月が1月だって?
見れば分かりますが、当時の暦と今の暦とは2ヶ月のずれが有るみたいです。
それはそもそも当時の1月が今の3月頃から始まっていた為です。

最初、古代ローマで暦が作られた時、冬の寒い時期(今の1月、2月頃)は日付がなかったんですって。
寒くて農作業や戦が出来ないこの時期は、文字通り冬ごもりの時期で、数えるに値しないと考えたんだそうですよ。春になり暖かくなる頃、つまり今の3月頃から活動が始まり、同時に暦の日付も開始したんだそうです。

しかし、いくら寒いからと言って、日付が無い、なんてことが如何に都合が悪い事になるか、これは少し想像すれば直ぐ分かることです。
いくら寒くても、食べる物は食べるし、着物も必要でしょう。それに伴い多少の経済活動も発生するでしょう。
赤ん坊も生まれるだろうし、人も死ぬだろうし。でも、日付が無ければ誕生日も命日も無い、と言う事になる。

何より、春になり、いつから日付を開始したら良いか、と言う問題が出て来ます。
普通は太陽が出る位置を見て決めればいいんでしょうが、雨や曇りが続けばそれも難しい。

そんな訳で、王様が変るとこのへんてこりんな暦も改良されます
ロムルスさんが死んで、一年が十ヶ月しかない、この不都合極まる暦は廃止され、「10月 Deccmber」の後に、新たに二ヶ月付け加えられました。

1月  Martius (今の3月頃)
2月  Aprilis (今の4月頃)
3月  Maius (今の5月頃)
4月  Junius (今の6月頃)
5月  Quintilis (今の7月頃)
6月  Sextilis (今の8月頃)
7月  September (今の9月頃)
8月  October (今の10月頃)
9月  November (今の11月頃)
10月 Deccmber (今の12月頃)
11月 Januarius (今の1月頃)
12月 Februarius (今の2月頃)

これでともかく一年が繋がった訳です。
だから当時は、今の三月が最初の(一番目の)月で、今の二月が最後の月だったんですね。

「月」の名前の由来

ところで上記の月名の内訳を簡単に書いてみます。

1月 Martius (今の3月頃)
2月 Aprilis (今の4月頃)
3月 Maius (今の5月頃)
4月 Junius (今の6月頃)
迄と
11月 Januarius (今の1月頃)
12月 Februarius (今の2月頃)

以上は神様の名前。
例えば、「4月 Junius (今の6月頃)」は、母なる結婚の神ユノーから来ていて、今でも六月の花嫁を「ジューンブライド」等と言って祝福する訳ですな。

5月(今の7月)から10月(今の12月)迄はそれぞれの順番を表す数詞です。
5月 Quintilis (五番目の)と言う意味
6月 Sextilis (六番目の)
7月 September (七番目の)
8月 October  (八番目の)
9月 November (九番目の)
10月 Deccmber (十番目の)

今の暦は、Januaryから始まっていますが、その頃は未だ上記の様にMartius(March-英語表記)から始まって、Februarius で一年の終わりとしていました。

だからSeptemberやOctoberも、ちゃんと7番目、8番目と、実際の順番通りずれなく対応していました。
で、Martiusの月から順番に日にちを割り当て、最後残った日にちをFebruariusに割り当てたって事です。
結果、2月には29日が割り当てられました。

他の月の日にちが何日だったか、と言うような細かい事はここでは書きませんが、一年の合計日にちは、355日でした。いまの365日に比べ、10日も少ないのは、元々「ひと月」と言うのは、月の満ち欠けサイクル(約29.5日)を元にして決めていた「太陰暦」の為です。

昔から世界中色々な暦が有って、様々なバリエーションが有るのですが、月の満ち欠けを元にして、一月を30日前後にする、と言うのは共通しています。
今でこそ「光害」等と言われるほど過剰な光に溢れる夜ですが、ちょっと昔までは、夜は真っ暗が当たり前、それを照らしてくれる月は、今では想像も出来ないくらい有り難かったんでしょうね。
それに昼の太陽と違い、満ち欠けが有り、新月から次第に満ちてくる月の光を、恋しい恋人を待つように焦がれていたんじゃないですかね。

「時間」と言うのはは、元々規則的なサイクル現象を元にカウントします。
昔の人が月の満ち欠けを、真っ先に暦に取り入れたのは極く自然な事だったんでしょうね

しかし、一年を355日とすると、年を経過するに従い、暦の日付と実際の季節がずれてきます。暦で大切なのは、この自然現象と暦の日付が毎年一致する事です。
地球が太陽を一周する時間(一太陽年)は、365.2421987日だそうです。ところが、前述のように、暦の一年を355日にしてしまうと、実際の季節の移り変わりに比べて、暦の日付の方がどんどん進んで行くことになります。
年が経過するごとに広がるこのギャップは、農作業や季節の行事などに大きな不都合をもたらしたでしょう。

他にもあれこれ不都合なことが有ったらしいのですが、そう言ったことを綺麗に整理しょうとしたのが、Julius Caesar(ユリウス・カエサル或いは、ジュリアス・シーザー)です。
その改革の際、 同時に彼は、Januaryを一年の一番最初の月、1月として、定着させました。

ユリウス暦

実は、これまでの長いお話は前段、これからが最後の人間くさいお話。

権力を握ると大体、暦とか、度量衡だとかをいじって見たくなるものらしい。
シーザーも、大いに関心を持ち根本的な改良に手をつけます。これがユリウス・カエサルの名を取ったユリウス暦です。

  • 前述のように、自然の季節と、暦のギャップが広がり、三ヶ月もずれてきた。
    これの解消。
  • Maius(March)から始まっていた一年を、Januarius(January)から始まるよう正式に決めた。
    前から、一番寒い時期のJanuaryを「一月」に変更する、と公式には決まっていたそうなんだけど、シーザーがこれを定着させた訳です。(これにより、最初述べた「タコの月」が10月になると言う、二ヶ月のズレが生じた)
  • 一年を365.25日とし、平年を365日、4年に一度のうるう年を366日とした。
    奇数月(1,3,5,7,9,11)を31日
    偶数月(4,6,8,10,12)を30日、
    元々半端だった2月を29日とし、うるう年だけ30日にした。
  • そうしてシーザーは、自分の誕生月の7月(Quintilis-5番目のと言う意味)を自分の月として、(Julius)に替えた。(英語でJuly)。

では何で、8月や10月が31日になり、Sextilis(六番目の-今の8月)がAugustになんかなったのかと言う、より一層人間味の有る話はこの後。

アウグストゥスの改暦

前回カエサルが、それまでの暦を整理し、今の暦の元になるものを作ったところまで行きました。これをユリウス・カエサルの名前を冠して「ユリウス暦」といいます。
7月に自分の名前を付ける、と言うおまけつきで。

カエサルは「ブルータス、おまえもか!!」てな訳で暗殺されます。後を継いだのが、アウグストゥス(オクタビアヌス)です。
アウグストゥスは、ライバルのアントニオを、アクティウム海戦で破り、ローマの実権を握ります。(この辺のいきさつは、映画「クレオパトラ」等を見て下さい)

その頃までにユリウス暦も、うるう年の解釈の違い等で、三日程の狂いが出ていたらしい。これを正常に戻す為、アウグストゥスも暦の改定に手をつけます。それだけなら何のことは無かった。

しかしやはりアウグストゥスも又、自分の名前を暦に持ち込みます。
アクティウムの戦いに勝った八月(Sextilisー六番目の)を自分の名前、Augustus(August-英語)に替えます。

ところが、ユリウス暦の8月は偶数月で、元々は小の月(30日)でした。
自分の月が小の月では、しょうがないという事で、これを31日に替えてしまいます。
そしてその分を、元々少なかった2月からもって来ました。これで2月が28日(平年)になった訳です。

又、強引に8月を31日にしたので、7、8、9月と三ヶ月続けて大の月となってしまいました。
これもまずい、と言うことで、9月以降順送りに大小入れ替えました。

これが今使っている暦の原型です。

グレゴリオ暦

その後、実際の1太陽年(365.2421987日)とユリウス暦の一年(365.25日)とのギャップが広がり、その解消の為、グレゴリウス13世と言う人が、改暦します。これが今に繋がる「グレゴリオ暦」ですが、これは、まあ省きます。
なんと言ってもローマのお二人が面白い。

と言うことで人間味溢れる「暦」のお話はこれでおしまい。ジャンジャン。

ところで、あなたは今の(人間くさい)暦と、規則正しく大、小と順番に並んでいる暦と、どちらがいいですか。私は変化のある今の暦の方が、なんとなく味があるような気がします。

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