呑川-3(九品仏川緑道)

 

今の九品仏川と、昔の九品仏川

九品仏川は呑川支流のうちの1つ。今は全区間暗渠となって下水道幹線になっている。その暗渠の上が緑道として整備されていて、それほど広くはないが中々洒落た散歩道になっている。
同時にかっての九品仏川は今と違った流路と姿をしていたそうで、その九品仏川が辿ったであろう経過も、私のような「なんちゃって地形フェチ」にとって緑道の景観以上に非常に興味深いものがある。

「若しかあんにゃ」だった?呑川

ふるさと魚沼に「若しかあんにゃ」と言う言葉がある。次男のことである。「あんにゃ」とは兄、長男のこと。
つまり長男に若しものことが有ったとき、代わりに兄になる立場を指しての言い方である。
実は呑川は元々は次男的立場の川であったようだ。要するに本流ではなく、本来の長男たる九品仏川の支流であったかも知れないのだ。

九品仏川は現在、その名の由来ともなったであろう九品仏浄真寺脇の、今猫じゃらし公園と呼ばれる辺りが源流とされている。実際緑道もここから始まっている。しかしそれは今の話。かって九品仏川はずっと上流に続いていたようだ。
川の本流、支流の区別は、河口から一番長い源流部を持つ流れを「本流」とするのだが、だとすると本来は九品仏川が呑川の本流、と言うか、呑川は九品仏川と呼ばれるべきだったのかもしれない。

首を切られた九品仏川

それが昔、本流たるべき九品仏川が、上流、今の等々力辺りで流れを断ち切られてしまい、その水を谷沢川に奪われてしまった。貝塚爽平氏はこれを「九品仏川の斬首」と表現している。それによって水量を増した等々力から下流の谷沢川は今、等々力渓谷となっている。
元々の流路の長さからすれば次男格だった呑川が、長男九品仏川の「若しか」の斬首の為、長男に格上げ本流となった。……と言うことではなかったか。

 

地形図

クリック、拡大表示でご覧ください。

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撮影Map

クリックするとGooglemapと連動して表示されます。

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九品仏川と谷沢川(等々力渓谷)

河川争奪か人口開削か?

冒頭書いたように九品仏川は昔、谷沢川によって「斬首」されたらしい。その経過は以下の通り。

元々の谷沢川は国分寺崖線に切れ込んだ、いわば谷地からの湧水を集めて多摩川に注ぐ、短くて小さな川だったらしい。おそらく今の不動の滝辺りの湧水を集めての川だったのだろう。しかしこの豊富な湧水によって谷沢川の谷は奥へ奥へと浸食され(谷頭浸食)、その北側を流れていた九品仏川に繋がった。
九品仏川上流の水は傾斜のある谷沢川に流れ込み、流量を一気に増やした谷沢川はますます大地を深く削り、現在の等々力渓谷が形成された。今や谷沢川は1級河川である。
上流部の流れを奪われた九品仏川の等々力から下流部分は流れが逆になって(逆川)、これも谷沢川に流れ込みこととなったが、上流からの水の供給を絶たれてしまった訳だから、僅かな湧水のみでは川としての姿を維持出来なくなったのだろう、現在はわずかな痕跡を残すのみでかっての流路を辿ることさえできなくなってしまった。

以上が谷沢川による河川争奪、いわば「自然説」だが、別に「人工開削説」もある。
今の九品仏川の源流となっている浄真寺猫じゃらし公園辺りは昔沼や池の低地だったらしい。ここに広がる「奥沢の底無し田圃」といわれた深田の排水を目的として上流部の水の流れを人工的に絶った、と言うものだ。

ただどちらの説も、それぞれ妥当性と難点を持っていて、確たる結論は出ていないようだ。

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等々力渓谷

……と言うことで、その流路変更の現場を見てみよう。九品仏川取材の為、等々力渓谷を歩くことになるとは思わなかった。

 

なお、等々力渓谷については>こちらも参照のこと。

等々力駅からほど近いゴルフ橋の脇に、渓谷への降り口がある。

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ゴルフ橋上からの等々力渓谷

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ほぼ90度のコース変更

ゴルフ橋から降りたところ。
写真奥が上流方向。北西(正面奥)から流れてきて、本来はそのまま南東(右側)に流れていた。河川争奪、或いは人口開削でか、ここでほぼ直角に南(左側)にコースを変える。

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逆川からの流入口

今は全く水が無いようだが、分断(斬首)された九品仏川の下流部分が逆川となって、谷沢川に流れ込んでいた時期が有った。

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不動の滝

かっては湧水量ももっと豊富だった。とどろきの名前の由来がこの滝からの水音だとの説もある。元々の谷沢川はこの辺を源流部として多摩川に注ぐ短い川だったのだろう。

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逆川

次に逆川。谷沢川によって上流部の流れを断ち切られ、周囲の多分僅かばかりの湧水だけを水源とした下流部が、流れを逆にして谷沢川に注ぐことになった。
等々力渓谷入口から道路を挟んで、かっての逆川の跡が残っている。

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しかし残念ながら立ち入り禁止のようで、入ることはできない。

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反対側、都道312号線からの逆川。こちらも入ることはできない。
台地の地形からすれば本来はこちらが下流になる筈なのだが、「逆川」だから上流になる。痕跡はこの312号線までで、この先は辿ることが出来なかった。

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九品仏川緑道

浄真寺と猫じゃらし公園

ここは九品仏浄真寺に隣接する猫じゃらし公園。かってこの辺は沼地で池も有ったという。今でもなんとなく谷地の雰囲気で湿り気を感じる。
上流を河川争奪で斬首された九品仏川は、現在ここを源流としているようだ。

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水が流れ出していたが、実際に湧水も有るのだろうがこれはおそらく循環させているのだろう。流れの先に木道が見える。

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萩の花が咲いていた。
子供のころは雑草にしか見えなかったが、今は一番風情を感じる好きな花。

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なんと木道

いかにも低湿地帯らしく遊歩道は木道になっていた。

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浄真寺の脇を、いろいろ姿を変えながら。

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九品仏川緑道、スタート地点

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番外編、九品仏浄真寺

一旦九品仏川から離れて、川の名前の由来ともなっている九品仏浄真寺。広い境内と伽藍は落ち着いた静かな佇まいで中々癒される。
浄真寺の山号が「九品山」なのだそうだ。

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山門・紫雲楼

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九品仏

本堂に対面して3つの阿弥陀堂が並んでいる。それぞれに3体、上品上生(じょうぼんじょうしょう)から下品下生までの合計9体の阿弥陀如来像が安置されている。浄土教における極楽往生の9つの階層を表しており、これらをあわせて九品(あるいは九品往生)と言うのだそうだ。

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真ん中の上品仏3体を収めた上品堂だけが、扉が開いていて像を見ることが出来た。

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本堂

本尊の釈迦牟尼如来座像。
九品仏を含め合計10体の像は、それだけで大したものだ。

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境内の池

ここはサギソウで有名らしい。しかし季節的に花を見ることはできなかった。サギソウは世田谷区の区花でもあるそうだ。

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九品仏川緑道

再び九品仏川緑道に帰って、ここからスタート。
緑道の下は暗渠になっていて、下水幹線として使われている。

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サギソウ

「鷺草の里」の碑が。サギソウは世田谷区の区花でもあると言う。

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鶯谷橋

東急大井町線にぶつかり、一旦緑道は中断。

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自由が丘

東急大井町線を迂回して超えると、自由が丘の洒落た街並みを貫いて緑道が続く。

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ここでまた東急大井町線を超える。

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再び東急大井町線

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目黒線

一旦緑道は中断。迂回して踏切を渡る。

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目黒線を越えて続く緑道。この先突き当りを左に曲がる。

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呑川との合流点は直ぐそこ。

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呑川合流

呑川本流、>こちらに出る。

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呑川開渠の始まり

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合流点から九品仏川緑道を振り返る

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合流地点付近の全体図

東急大井町線と目黒線が交差し、呑川本流と九品仏川が合流する。
歩いているだけでは全体像が掴めない。そこでGoogle先生の助けを借りて航空写真を掲載してみた。近代的な街並みの中を曲がりくねった水路跡が緑道として残されている。貴重な自然・文化遺産。
地形図も参照のこと。

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